物理学専攻の内田慎一教授がカマリング-オンネス賞を受賞

内田慎一先生の、カマリング-オンネス賞受賞をお祝いして

物理学専攻 小形正男助教授

内田慎一教授

物理学専攻の内田慎一教授(物性実験)が、本年度のカマリング-オンネス賞を受賞されました。この賞の名前となっているカマリング-オンネス(Kamerlingh Onnes)とは、1911年に超伝導現象を発見したオランダの物理学者の名前で、この方に因んで超伝導に関する実験のうちとくに際だった業績に対して与えられます。この賞は3年に一度「超伝導・高温超伝導の物質とメカニズムに関する国際会議」(M2S-HTSC)において発表されますが、今年の7月にドイツのドレスデンで行なわれた会議において、内田先生、プリンストン大学のオング教授(N. P. Ong)、東大新領域の高木英典教授が「銅酸化物高温超伝導体における異常金属相に対する先駆的かつ根本的な輸送特性の実験」に対して受賞されました。内田先生は、7月12日に3人を代表して受賞講演を行ないました。

ちょうど20年前の1986年、それまでの予想をはるかに越えた高い温度で超伝導を示す一連の銅酸化物として高温超伝導体が見出されました。内田先生は当時工学部において高木先生、北沢先生、田中先生と共に世界に先駆けて高温超伝導を確認し、詳しい物性特性に耐えうる良質の試料を作成しました。この研究をきっかけとして、世界中で高温超伝導体の真剣な物性研究が始まったといえると思います。その後も内田先生は、高精度の試料とともに、非常に興味深い高温超伝導体の性質を次々と明かにしてこられました。さらに、高温超伝導体の示す物性は固体物理学の基本的な問題と密接に結びついていることが分かり、そのため数多くの新たな研究分野が開拓されています。現在「強い相関を持つ電子系」として盛んに研究されている分野は、この高温超伝導体の実験を契機としています。

内田先生は、とくに電荷の自由度に関する研究を中心に行なっています。例えば高温超伝導の初期の段階で、光学伝導度の実験結果から、絶縁体に注入された電気伝導を担う粒子(キャリア)の性質の特異性を明かにしました。また、高温超伝導を示す2次元面の、面内と面間の電気抵抗が非常に珍しい特徴を持つことを示し、通常の金属では理解できないということを明確に示しました。

さらに、現在「ストライプ状態」と呼ばれている状態は、内田先生とトランクアダ(J. M. Tranquada)との共同研究によって見出されたものです。この状態は、電荷とスピンが2次元面内で規則的に並ぶという状態で、他の固体物理学の分野へも大きな影響を及ぼしました。さらに最近では、オング(N. P. Ong)と共に超伝導状態に相転移する温度より高温の状態においても、なんらかの超伝導的な様相を示すという非常に特異な現象を見出しました。これは、高温超伝導を理解するためには、従来の超伝導と異なった全く新しいメカニズムを考えなければならないということを意味しており、大変興味を持たれています。

このように内田先生は高温超伝導体における異常な物理現象を、とくに電荷の運動という観点から明らかにするという研究を、世界をリードして行なっています。理論の研究者にとっても、他の実験の研究者にとっても刺激的な実験を続々と示されてきました。今後も、内田先生のますますのご活躍を期待しています。