化学専攻の梅澤喜夫教授が2006年度日本化学会賞を受賞

梅澤喜夫教授

化学専攻の梅澤喜夫教授が2006年度日本化学会賞を受賞しました。同賞は,「化学の基礎または応用に関する貴重な研究をなし,その業績が特に優秀な者」に対して,日本化学会から贈呈されるものです。今回受賞の対象となった研究は,「イオン・分子の可視化と検出のための新手法」です。

研究紹介

梅澤先生は,“見えないものを見えるようにする,測れないものを測れるようにする”方法を創る研究を行いました。最も重要な業績は,細胞情報伝達の分子過程を認識して,その場で蛍光・発光の光信号に変換し,細胞外に出力する光プローブを体系的に開発したことです。生きた細胞・組織の生理的化学過程の理解のために,細胞内シグナル伝達において鍵となる生体情報分子を可視化計測する技術を開発し,それら生体情報分子の細胞内での動態を明らかにしました。またSTM分子探針を創案し,分子間電子トンネル効果に基づく化学種,官能基の選択的可視化検出法を開発しました。

例えば,一酸化窒素(NO)プローブです。この光プローブは,生細胞中 NO を 10-10M 以下の超高感度まで可逆的に検出できます。その結果,ヒト血管内皮細胞中の NO の生理的濃度が 〜10-9M であることを発見しました。同様に脂質セカンドメッセンジャーの蛍光可視化プローブを開発し,生体の動態分析に役立っています。蛋白質のリン酸化を選択的可視化する一般的手法も特筆すべきものでしょう。また,プロテインスプライシングという反応に基づく蛋白質間相互作用可視化検出プローブを開発しました。更に蛋白質のオルガネラ局在検出光プローブを開発し,ミトコンドリア局在蛋白質の網羅解析法を確立しました。 その他にもSTM分子探針と試料間の分子間電子トンネル効果に基づき,分子内の局所的フロンティア軌道,核酸塩基のピンポイント可視化などに成功しています。これは分子間電子トンネル効果顕微鏡の創案といえます。

梅澤先生のこうした一連の優れた研究は,化学および生命科学の基盤技術として,化学と生物分野の発展に大きく寄与するものです。