化学専攻の中村栄一教授が2003年度日本化学会賞を受賞

中村栄一教授

化学専攻の中村栄一教授が2003年度日本化学会賞を受賞しました。同賞は、「化学の基礎または応用に関する貴重な研究をなし、その業績が特に優秀な者」に対して、日本化学会から贈呈されるものです。今回受賞の対象となった研究は、「新規有機化学反応に基づく機能性分子の創製」です。

研究紹介

中村先生は、多種多様な有機分子の振る舞いを理解し、望みのままに操ることを目指して研究を行う中で、数多くの新規で重要な有機反応を発見しました。これらのうち特筆すべきものとして、有機銅化合物やカルベン活性種を用いる炭素‐炭素結合形成反応が挙げられ、C60やカーボンナノチューブなどに代表される炭素クラスター分子の化学修飾に極めて有効であることを示しました。これらの独自の反応を用いて作る創り出される一群の炭素クラスター化合物は、いずれも独創的な構造を持ち、これまでに無い機能を発現します。

例えば、両腕構造を持つフラーレン分子(図1)にはDNAを凝集する性質があり、現在これを利用して、動物細胞への遺伝子導入法の開発が進んでいます。また、C60分子への有機基の5重付加反応を開発したことで、フラーレン・フェロセン複合分子(図2)を始めとした種々のフラーレン・金属錯体の合成が可能になりました。フラーレン・金属錯体を水に溶けるようにすると、興味深い超分子科学現象を示します。5つのフェニル基を持つ5重付加体の陰イオン(図3)は水中で整然と集まり、大きさの揃った層構造を持つベシクルを形成します。これによって中村先生は、「硬い」脂質二重膜というこれまでに存在しなかった物質を創出することに成功しています。一方、長い炭素鎖を持つ5重付加体(図4)が示す、液晶としてのユニークな性質も明らかにしています。これらの分子は、電子素子や触媒としての炭素クラスターの新たな可能性を示すもので、現在も新しいフラーレン・金属錯体の合成が精力的に進められています。

中村先生のこうした有機反応化学から機能物質科学をシームレスに繋ぐ研究に、学会の内外から益々注目と期待が集まっています。