小林俊行教授の紫綬褒章受章

坪井 俊(数理科学研究科数理科学専攻 教授)

図1
小林俊行教授

紫綬褒章は,学術・芸術・スポーツで著しい業績を上げた人に贈られる褒章です。小林俊行教授が,数学の分野において紫綬褒章を受章されました。

小林教授は,1980年代から,世界に先駆けてリーマン多様体の枠組みを超えた不連続群の研究に取り組み,局所的に均質な高次元空間の大域的な形に関する不思議な現象を掘り起こしつつ,単独でその基礎理論を構築し,幾何学とリー群論にまたがる新しい研究領域をいくつも興しました。

小林教授の研究は,「対称性」をキーワードとして,代数,幾何,解析にまたがる壮大なものであり,数学全体へ影響を及ぼしています。とくに,「リーマン幾何学の枠組みを超えた均質空間における不連続群の理論の創始」,「無限次元における対称性の破れを代数的に記述する理論の創始」,「極小表現の大域解析学の創始」,「可視的作用の概念による無重複表現の統一理論の創始」は,スケールが大きく,特筆される研究成果として国際的に高く評価されており,数学における本質的なブレークスルーを実現しました。

小林教授が創り出す新しい領域は,類例のない独創的なものであるにもかかわらず,その奥深くに古典的な例が豊富に取り込まれています。しかも数学の一分野に留まるのでなく,代数,幾何,解析の純粋数学3 大分野が調和する自然な美しさと深さが世界の数学者を惹き付け,重要な国際会議の招待講演を務めるなど,現代数学の流れに大きな影響を与えています。