田村元秀さんの東レ科学技術賞の受賞によせて

海部 宣男(国立天文台 名誉教授)

図1
田村元秀教授

田村元秀さんの東レ科学技術賞の受賞,心から喜んでいます。

太陽系外惑星はいまや宇宙論と並ぶ天文学の大テーマとなり,日本もすばる望遠鏡やアルマ,理論で大いに存在感を発揮しているのは,喜ばしい限りです。その背景には,故林忠四郎先生の京都大学理論グループの太陽系形成論から発展した,日本の恒星・惑星形成論の流れがあります。また,国立天文台野辺山宇宙電波観測所のミリ波分子分光観測開拓や京都大学上松観測所での赤外線観測に始まる,星形成・惑星形成観測の流れがあります。そして野辺山のルーツはまさに,赤羽賢司・故森本雅樹のお二人が1967年度東レ科学技術研究助成金を頂いて三鷹の東京大学東京天文台(現国立天文台本部)に建設した,口径6mミリ波望遠鏡でした。私もその建設に参加し星間分子分光の創始に関わりましたから,田村さんの受賞には感慨もひとしおです。

その後すばる望遠鏡の建設に際して,その優れた性能で太陽系外惑星を観測できないかと考え,コロナグラフと補償光学を組み合わせた専用観測装置を提案しました。この装置の開発責任者として当時海外におられた若い田村元秀さんに目をつけ,田村さんの先生・佐藤修二さんとも相談して,引っ張りに行きました。太陽系外惑星がまだ見つかっていない, 1992年ころです。田村さんたちの奮闘で実現した観測装置CIAOですばる望遠鏡が原始太陽系円盤・系外惑星の観測に先駆けたのは,ご存じのとおりです。さらに田村さんたちは苦労しながら装置の改良を重ね, 30m望遠鏡TMTで地球型惑星に生命存在の証拠を探そうと,夢を拡げています。今後も田村さんの活躍への期待は,大なるものです。