井出哲氏の日本学術振興会賞・日本学士院学術奨励賞受賞によせて

ゲラー・ロバート(地球惑星科学専攻 教授)

図1
井出哲教授

地球惑星科学専攻教授の井出哲(いでさとし)氏が,2013年度の日本学術振興会賞および日本学士院学術奨励賞を受賞されました。なかでも日本学士院学術奨励賞は,日本学術振興会賞受賞者25名のうちから,「優れた研究成果をあげ,今後の活躍がとくに期待される若手研究者6名」が選ばれたものです。

井出氏が取り組んでいる地震の震源の研究は,地震発生過程を理解するためにもっとも基礎的かつ重要な課題に関するものです。 大学院生時代には,地震波の分析から,地震断層における摩擦法則が推定できることを示しました。いまでは当然と思われていますが,当時は誰も気付かなかったことで,コロンブスの卵のようなものです。異なる現象を俯瞰的にみて,鉱山の山はねから巨大地震まで,サイズの異なる現象を一括して比較し,地震波エネルギーに関するスケール法則を導き,ゆっくり地震のスケール法則が普通の地震と異なることを指摘した実績もあります。 このような井出氏の一連の研究は,国内外共にこの分野の研究者に大きなインパクトを与えており,それぞれが異なる分野で新しい展開を生み出しています。

2011年東北沖巨大地震は地震学の「常識」の多くを打ち破りました。地震という現象は既成概念を廃して再検討されなければならない状況に置かれています。地震発生を説明する新パラダイムが必要で,その目標への道を開拓することは,この分野の全世界の研究者が挑まなければならない課題です。井出氏がその壁を突破することが期待され,日本学士院学術奨励賞の受賞として選抜されたと思われます。