小林富雄氏,浅井祥仁氏の仁科記念賞受賞によせて

素粒子物理国際センター長 駒宮 幸男(物理学専攻 教授)

2013年のノーベル物理学賞が,ヒッグス粒子の理論的予言をしたアングレール (Francois Englert) ・ヒッグス (Peter W. Higgs) 両氏に贈られることが発表されたのが10月のことです。この様なスピード受賞となったのは,ヒッグス粒子の重要性を示すものですが,ノーベル賞・受賞理由のかなりの部分を,「ヒッグス粒子発見」の実験的な成果の部分にあてています。これが示す様に,ヒッグス粒子発見の実験成果がきわめて重要であります。

東京大学・素粒子物理国際研究センターは,このヒッグス粒子を発見するべく,LHC (Large Hadron Collider) ・ATLAS (A Toroidal LHC ApparatuS) 実験の構想段階から参加し,理学系研究科と協力して,実験を準備・推進してきました。その中核メンバーが,小林富雄氏,浅井祥仁氏であります。小林氏は, ATLAS実験に参加する日本の研究者を束ねながら,検出器の設計,製作,および実験の遂行に大きく貢献してきました。また,物理解析の拠点となる地域解析センターの立ち上げに,大きく貢献をしました。浅井氏は,研究グループ責任者として,本センターのみならず日本や海外の若手研究者を束ねて研究を推進してきました。激しい国際競争が繰り広がれているヒッグス粒子探索において,日本の研究者が大きな貢献ができたのは,たゆまぬ新しい研究方法の開発や,その指導力であります。これらの点が評価された受賞であります。

ヒッグス粒子の発見は「真空」の意味を変えるパラダイムシフトであり,素粒子のみならず,宇宙の研究などに大きな影響のある成果であります。このヒッグス粒子を通して「真空」や「宇宙のはじまり」を探る新しい加速器研究 (International Linear Collider Project=ILC計画)に日本が重要な役割を果たすこと世界中から期待されています。

図1

小林富雄教授

図2

浅井祥仁教授