川口由紀さんの井上リサーチアウォード受賞を祝して

上田 正仁(物理学専攻 教授)

図1

川口由紀助教

物理学専攻助教の川口由紀さんが「スピノールBECにおける量子多体効果の研究」で第4回井上リサーチアウォードを受賞されました。井上リサーチアウォードは自然科学の基礎的研究で優れた業績を挙げた将来性豊かな若手研究者の支援を目的としたものであり,物理学分野では川口さんが初めての受賞になります。

川口さんの研究対象である原子気体のボース・アインシュタイン凝縮(BEC)は,レーザー冷却技術を用いて1995年に実現されました。原子間の相互作用の性質は通常は各原子に固有の性質ですが,レーザー冷却された系ではこれを自在に制御することができるために基礎研究をするうえで理想的な巨視的量子物質となっています。とくに,通常のBECとは異なり,メゾスコピック系で実現されるフラグメントBECでは複数の1粒子状態にマクロな数の原子が凝縮する結果,非自明な凝縮状態が生じます。川口さんは,マクロな系からメゾスコピック系へと系のサイズを連続的に変化させることで,対称性の破れ・回復,すなわちフラグメントBECの出現と崩壊が制御できる点に着目し,量子揺らぎおよび熱揺らぎによる自発的対称性の破れと回復のダイナミクスを明らかにする研究を進めています。このようなダイナミクスの研究は,宇宙・高エネルギー物理から超伝導・超流動まで自発的に対称性の破れた系全般に広く波及効果を及ぼすものと期待されます。