アクチュアリー・統計プログラム

楠岡成雄(数理科学研究科/理学部数学科 教授)

アクチュアリー・統計プログラム

アクチュアリーは、保険、年金に関する高度に専門的な数理的問題を扱う専門家を指す。保険会社が健全に運営されるように、確率・統計理論を駆使して適切な保険料、年金掛け金などを定めるほか、資金運用上のリスクを低減させるうえでも重要な役割を果たす。日本では「社団法人 日本アクチュアリー会」の主催する試験に合格し、「正会員」として認定されることで、アクチュアリーと呼ばれるのである。

これまで理学部数学科(数理科学研究科)は保険・金融業界に多くの有為な人材を輩出してきた。その中にはアクチュアリーとして活躍する者も多い。しかし近年の金融自由化や証券市場のグローバル化により金融商品は複雑化し、アクチュアリーに求められる数理的知識、能力もきわめて高度なものになっている。

そこで課題として浮上したのが、大学に在学中の早い時期から、アクチュアリーに関する基礎的な知識を教授するプログラムの実現だった。数理科学研究科の楠岡成雄教授は語る。

「欧米諸国ではアクチュアリー学科を持つ大学、大学院が少なからず存在しますが、日本にはまだありません。目先の試験対策ではなく、いかなる時代の変化にも対応できる人材を育成する東京大学本来の使命に鑑みて、関連の専門科目を開講することとしました」

第一線の実務家を講師に招聘

2005年度より大学院数理科学研究科が主体となり、「アクチュアリー・統計プログラム」がスタートした。取得単位の概要は次の通りである。

科目構成は必修4科目、選択13科目の計17科目。必修8単位を含む30単位以上を修得した者に修了証書を発行する。数学科の学部生を中心に大学院生も履修は可能だが、卒業単位に認定される科目は一部にとどまり、受講者は自身の専攻プラスアルファの学習が求められる。

最も特徴的なのはバラエティーに富んだ講師陣の顔ぶれだ。

「研究者のみならず、保険金融実務の専門家として社会の第一線で活躍中の外部講師を多数招聘しました。狭義の保険数理のみならず、ファイナンス分野の知識も得られるよう構成しています。またケースを基にした演習なども取り入れています」(楠岡教授)

従来の数学教育は、大学においても「与えられた問題を解く」能力の養成に力を注ぐ傾向があった。しかし現在では、現実社会の複雑な事象を理論モデル化し、適切な形で「問題そのものを設定する」人材が求められている。「アクチュアリー・統計プログラム」開設の意義もその点にあると楠岡教授は強調する。

(文章:横山拓/写真:佐藤久)