若手研究者が語る、リガクの明日

若手研究者が語る、リガクの明日

物質の根源と宇宙の始まりの謎に迫る

世界最大の加速器を持つCERNで素粒子物理学の最先端に携わる中浜優さん。高校生のときに感じた思いを胸に、物質の根源と宇宙の始まりの謎に今日も迫り続けている。

PROFILE

中浜 優

CERN(欧州合同原子核研究機構)フェロー
中浜 優
2004年東京大学理学部物理学科卒業、’06年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了、’09年同博士課程修了、’06〜’09年日本学術振興会特別研究員(DC1)、’09〜’11年フランス国立科学研究センター(CNRS)LAL-Orsayポスドク、’11年より現職。

「高校生のとき、CERNの加速器実験計画のニュースを耳にしました。山手線一周とほぼ同じ、周長27kmもの巨大な加速器で、目に見えない小さな素粒子を捉えようというのが不思議でたまりませんでした

素粒子物理学を研究する中浜優さんは、自身の研究テーマとの出会いをこう語る。巨大な加速器と微小な素粒子の世界――。この圧倒的なまでのコントラストが、中浜さんを素粒子の世界に惹き込んだ。そして今、中浜さんは、自分の人生を決めるきっかけとなったCERN(欧州合同原子核研究機構)で日々研究に励んでいる。

素粒子物理学は、物質の根源と宇宙の始まりに迫る学問だ。CERNは、この分野で世界最大の研究機関として大きな役割を果たしている。昨年メディアを賑わせた、物質の質量の起源とされる「ヒッグス粒子」は、CERNが「発見の可能性」を発表した。また、中浜さんの研究チームが挑む「超対称性粒子」は、宇宙の全質量の約23%を構成しているとされる「ダークマター」の有力候補だ。発見されれば、宇宙の始まりの謎に一歩近付くと言われている。

博士課程を修了後、中浜さんは、CERNの実験にも参加するフランス最大の素粒子物理学研究機関、LAL-Orsayの門を自ら叩いた。「素粒子の研究をするならCERNの世界最高エネルギーの加速器実験に携わりたい」というのが大きな動機だった。そして昨春、CERNの本丸で、任期3年のフェローの座を射止めた。

CERNには、ヨーロッパを中心に世界各国から研究者が集う。世界中の研究機関との交流も多く、英語は欠かせない。また、実験結果の解析やシミュレーションのためのプログラムも自分で書くのが原則だ。

「在学中から高エネルギー加速器研究機構での国際共同実験に参加し、海外の研究者と机を並べ、プログラミングも日常的に修得できました。環境に恵まれていました」。

最前線を目指すには、研究分野で力をつけることに加え、英語とプログラミング言語、二つのコトバの修得も必要だ。厳しい環境に身を置くことは、その助けになる。

中浜さんにとって、理学の魅力とは?

「人類が挑み続けてきた大きな謎、物質の根源や宇宙の始まりに迫ることができるのが大きな魅力です。科学技術の発展を肌で感じられるのも醍醐味です。巨大な加速器や検出器を精密に動かすのは想像以上に難しい。実験装置そのものが科学技術の賜物ですし、その開発を通じて、最先端を切り開いている実感を得ることができます

中浜さんは、CERNでの研究の先に何を見ているのだろうか?

「いずれは、インパクトある物理結果を残せる実験を牽引する立場に就きたい。そのために、フェローの任期修了後もCERNの実験現場に身を置いて研究を続け、力をつけていきたいと思っています」

あの日、CERNのニュースを耳にして以来、中浜さんの眼差しは、素粒子の世界の最前線に向けられている。

photo/貝塚純一 text/萱原正嗣