古田研究室(数学科)

古田研究室(数学科)

学生は将来の同僚。どう育っていくかが楽しみだ。
研究室レポート
古川研

PROFILE

数理科学研究科 幾何学専攻 古田幹雄 教授
古田幹雄教授
1983年東京大学理学部数学科卒業。'85年同大学院理学系研究科修士課程修了後、同大学理学部助手。'95年京都大学数理解析研究所助教授を経て2000年より現職。その間、オックスフォード大学、マックスプランク研究所、ミュンヘン大学、MITに研究員、客員教授等として滞在。

「大学に入ってからが本番だ— 」 高校生だった古田幹雄教授にとって、大学進学は真剣な学びの場に入っていくことを意味していた。そのころから、「岩波講座 基礎数学」シリーズを読むことを自らに課していた古田教授が、幾何学の道に進んだのは、本を通じて「指数定理」と出会ったことがきっかけだった。

学部4年のセミナーでは「指数定理」の本を講読し、その後「指数定理」とも関連するマイケル・アティヤとラウル・ボットの論文読解に時間を費やした。それは、幾何と代数、解析、さらには物理が重なり合う、新しく魅惑的な分野だった。修士課程に進むと、アティヤの弟子のサイモン・ドナルドソンが発表した画期的な理論の研究に、古田教授はただひたすらに打ち込んだ。

数学の研究は個人がベースだ。指導教員を同じくする学生が一堂に会するのは、論文読解発表や研究の中間報告の場であるセミナーのときだ。それ以外は、銘々が各人のペースで研究に取り組んでいる。

「大学では論文を読んだり書いたり、机に向かう勉強をして、通学の移動中に頭の中で考えることが多いですね」と語るのは、博士課程1年の清水達郎さん。修士課程1年の林 晋さんは、「家で勉強したり図書館に行ったり、カフェでコーヒーを飲みながら勉強するときもあれば、院生室で他の院生と話しながら研究することもあります」という。数学ならではの特徴のひとつだ。

では一人ひとりが取り組む課題は、どのようにして決めているのだろうか?

「学生の希望やこれまでの勉強歴を聞いたうえで『これはどうだろう』と、いくつか示唆します。学生が何に向いているかはやってみないと分かりません。『こういう刺激を与えると学生はどうなるか』を考えながら、試行錯誤の連続です。数学の場合、今の学生は将来の同僚です。同じ世界に挑む学生の才能が開花するのを手助けするつもりで学生と向き合っています」。それが古田教授の学生の育て方だ。

では、数学を学ぶ魅力とは何か?

「僕は、高校時代は数学が苦手でしたが、大学1~2年の物理・化学で習った数式に納得できなくて、それを理解したくて数学科に進みました。勉強していくうちに、ちょっとした閃きで新しいことが見えてくる数学の面白さを知りました」と、修士課程1年の眞鍋尚大さん。

就職か大学院進学かで迷った林さんは、今の心境を次のように語った。

「自分の興味を追究してよかった。周りには就職のために数学を避けた人がいますが、僕は目の前にある難しい数式から逃げたくなかった。分からなかったことが分かる瞬間はたまらなく面白いですし、先生のもとでしっかり学べば、世界で通用する数学者になれると信じています」。"分かる"喜びこそが、また新しいことを"分かりたい"というモチベーションを喚起する。

清水さんが最後に、こう付け加えた。

「数学は、自然科学のなかでももっとも普遍的な分野だと思います。物理的な制約を受けることなく、純粋に考えることだけで成り立っています。その純粋さと、自分の力でゼロから論理を構築していくことができるのが数学の醍醐味です」

自分の頭脳こそが最大にして唯一の武器。どこまでも突き詰めて考えたい人には、数学ほど深遠な世界はない。

学生⇒教授
逆評定
  • 「とにかく学生の面倒をすごくよくみてくれる先生です」(D1・清水達郎さん)
  • 「数学について話し出すと止まりません(笑)」(M1・林晋さん)
  • 「古田先生のもとで数学に打ち込むことができることが幸せです!」(M1・眞鍋尚大さん)

photo/稲田 平 text/萱原正嗣