今井研究室(情報科学科)

今井研究室(情報科学科)

計算を通じて知能の本質に迫る。
研究室レポート
今井研

PROFILE

情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻
今井浩 教授
今井浩
1981年東京大学工学部計数工学科卒業、'86年同大学院工学系研究科情報工学専門課程修了、工学博士。同年より九州大学工学部助教授。'90年東京大学理学部助教授等を経て、現職。2000年より'11年までJST ERATO量子計算機構プロジェクト総括責任者。

photo by kenji miura

「極端な話、紙と鉛筆さえあれば研究はどこでもできます」助教の河村彰星さんの言葉が、今井研究室の研究内容を象徴的に物語っている。研究テーマは、情報科学の基礎となる「アルゴリズム」。コンピュータにどういう手順で計算させれば、もっとも効率的に解に辿り着くのか?計算の原理原則に相当するプロセスを考え抜く。インターネットの普及により、世の中の情報は爆発的に増えているが、超巨大なデータを手際よく計算するアルゴリズムは、これからの社会に欠かせない。

研究は理論だけに留まらない。アルゴリズムの研究は、未踏域への挑戦や現実社会への応用も可能だ。未踏域とは、次世代コンピュータとして期待される量子コンピュータの研究である。現実社会への応用では、交通流やゲノムなどの解析にもアルゴリズムは役立つ。

問題の難しさを研究することもテーマになる。効率的に計算できない問題を特定することは、リソースの有効活用を考えれば重要な課題だ。「数学理論を愛する者にとっては、未解決問題への挑戦はロマンです。一方で、研究室にプログラミングコンテストの強豪が何人もいることからわかるように、アルゴリズムの追究は効率的なプログラム作成にも通じます。深い理論から、世の中に役立つ応用までの距離が近いのも、この分野の魅力ではないでしょうか」と河村助教は言う。

ひと言で表現するなら「完全なる自由と完璧なる自己責任」が、今井研究室の特徴だ。研究室に時間の制約はない。研究室にはほとんど出て来ず、自宅でひたすら問題を考え続ける強者もいる。ただし、自由の裏側には厳格な自己責任が求められる。

「何を研究してもいい、ということは、自分で研究テーマを決めろということです。自分で納得できるまで、徹底的に突き詰めて考えなければならないわけで、これは厳しい。いい加減なテーマを選べば、いい加減な成果しか得られませんから」。修士課程1年の岩田陽一さんは、自由に込められた意味の深さをこう解釈する。

研究室のホワイトボードには、いつも何らかの図や記号式が書きこまれているという。書いて考え、ディスカッションをして思考を深める。研究に行き詰まったら誰彼となく話を持ちかけるのが、この研究室のやり方。みんなが自分の考えをぶつけ合うなかで、アイディアがスパークするのだ。

なぜこの研究室を選んだのか。修士課程1年の太田浩行さんが挙げたのは、考え抜く楽しさだ。「とても歯がたたないような難問に挑戦するんです。何日も何日もひたすら考え続けていると、ふとアイディアが浮かんでくる。実際に解いてみて、いけるんじゃないかと確信できたときの快感。まさに考える喜びを感じる瞬間です」

研究者を目指す博士課程2年の夫 紀恵さんが強調するのは、今井教授の国際感覚だ。 「国際会議でどんどん発表するように、が先生の口癖です。プレゼンテーションのやり方なども厳しく仕込んでくださり、研究者として必要な能力を身につけさせてやろうという意欲を肌で感じますね。今井研究室を選んでよかったと思います」

学生⇒教授
逆評定
  • 「研究者として育てようとしてくれる姿勢を感じます」(D2・夫紀恵さん)
  • 「実は関西人。お酒の場でのムチャぶりも(笑)」(M1・竹井悠人さん)
  • 「相談には必ず時間をとってくれます」(M1・チッチャノック・チュンサティアンサップさん)

photo/貝塚純一 text/竹林篤実