黒田研究室(生物情報科学科)

黒田研究室(生物情報科学科)

生命「システム」の謎に挑む。
研究室レポート
黒田研

PROFILE

理学系研究科 生物化学専攻 黒田真也 教授
黒田真也
1991年神戸大学医学部卒業、同大学医学研究科大学院入学。'95年奈良先端科学技術大学院大学、助手。2002年東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻。同年同大学理学部生物情報科学学部教育特別プログラム、特任助教授。'06年より現職。

黒田研究室では、さまざまな生命現象を制御する細胞の中の「シグナル伝達機構」が、どのようなシステムで動いているかを明らかにする研究を続けている。

長いあいだ、生物学の研究は「一つの遺伝子やタンパク質における分子間の活動」といった、部分的・機械的に生命を捉える考え方が主流だった。しかし生命現象は、複雑な構成要素が絡まりあい、相互に影響を与え合った結果であることがわかるにつれ、その全体のネットワークを動的に、同時に捉える必要が出てきた。そのために生み出されたのが「システム生物学」である。

東京大学では2007年度に国内の国立大学で初めて、この領域を専門とする生物情報科学科を設立。生体細胞を使った実験とコンピュータによるデータ解析や数理モデリングを組み合わせ、生命現象の仕組みとダイナミクスを解析することを目標としている。

「細胞が増殖や分化をするときに、その現象を決めるのは、細胞の中にある一つの分子がもっている『時間的な情報』であることがわかってきました。例えるなら、ラジオの電波や音声を伝える空気の波のようなものです。電磁波の電子や空気の成分である窒素それ自体には何の情報も含まれていませんが、その時間的なゆらぎが情報を生んでいます。私たちの細胞の中でも同じように、一つの分子が持つ時間のパターンが違うことで異なる作用が起こっているんです。私たちが取り組んでいるのは、いわば細胞内の『言葉』の研究といえるでしょう」と黒田真也教授は語る。

システム生物学には生命科学の知識はもちろん、物理、工学、数学、情報などの分野の基本的な知識が必要になってくる。そのため黒田研究室にいるメンバーもさまざまなバックグラウンドを持つ。博士課程3年の渡邉可奈子さんは東北大学でショウジョウバエの遺伝子の研究をしていたが、「コンピュータを使った定量的な解析をしたい」と考え黒田研究室に入った。

博士2年の野口怜さんは大阪大学の基礎工学部で生体工学を学び、血流のシミュレーションなどの研究を行っていたが「実験もやってみたい」とこちらの門を叩いた。応用に重きをおく工学から理学に移ったことで、「生命の原理を追究できるところに非常にやりがいを感じます」という。

学部4年で研究室に入って3ヵ月の小鍛冶俊也さんは「進振りのときに30数年ぶりに東大に新しくできた学科と知って、面白い人が沢山いるに違いない」と考え、こちらに入ることを決めた。黒田研究室では毎週頭にディスカッションの時間を設け、研究チームごとにその週予定している実験と目標を発表、それに対して他のメンバーが提案をする。「学生もスタッフも関係なくどんどん意見が言えるところが魅力です」と小鍛冶さんは話す。

研究室が期待する人物像について黒田教授に聞いた。

「科学は常に新しいことにチャレンジすることが大事です。私も長年、細胞の分子生物学の研究をしてきましたが、数理解析を学んでから研究領域を移し、今に至っています。システム生物学は新しい学問分野で、数理解析もすればロボットを使った実験も行うなど、さまざまな能力や知識が求められます。日進月歩の領域ですので、チャレンジングなことを好む学生さんにぜひ来てほしいと思います」

学生⇒教授
逆評定
  • 「話をきちんと聞いてくれる。頭の回転が速すぎて、たまに会話についていけないけど(笑)」(D3・渡邉可奈子さん)
  • 「ビジネスマンだったとしても成功しそう」(D2・野口 怜さん)
  • 「教え方も工夫してくれてわかりやすいです」(B4・小鍛冶俊也さん)

photo/貝塚純一 text/大越 裕