02 情報科学科

いろんな分野の人が使える共通の仕組みを作りたい!

Presenter

情報科学科

情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻

  • 平木研究室 修士課程2年 中村晃一さん

入学時、実は物理学科を目指していた。 必要に迫られ、天体のシミュレーションのプログラムを書いたり、所属していた物理学研究会において有限要素法というシミュレーションのアルゴリズムをやるうち「だんだんコンピュータのほうにのめり込んで、こっちのほうが面白くなってきてしまったんです(笑)」。 そして今ではコンピュータの側から理学全般を見つめる。

情報科学科が取り上げるテーマは多岐にわたる。計算に関する数学的基礎理論、アルゴリズムの研究、ハードウエア・ソフトウエアの研究……。なかでも、中村晃一さんの所属する研究室が取り組んでいるのは、計算機の高速化だ。

「計算機には"万能性"があって、四則演算、条件分岐、データの格納・移動という基本的な機能を備えていれば、原理的にはあらゆる計算を行わせることができます。でも実際には時間がかかりすぎて、できないことが多い。それを可能にするため、高速化は重要なのです」

今の計算機でも速度は不十分。世界一の処理速度を誇るスパコン「京」ですら「気象・地震・宇宙など複雑な対象のシミュレーションでは速度が足りない場面が多い」のだそうだ。ハードとソフトの両面から計算機の高速化を図る研究が求められている。そんななか、中村さんが手がけるのはコンパイラだ。

「簡単に言うと、人間の書いたプログラミング言語を、コンピュータが直接実行できるように機械語に翻訳するソフトウエアです。コンピュータも複雑になってくると、万単位のプロセッサがあります。そのすべてを意識してプログラムは書けないので、各プロセッサに自動的に並列化する技術が重要になってくるんです」

高速化を求めているのはどの分野でも同様。だがすべての分野に通用する万能の最適化の方法はないという。だから中村さんは、研究の過程で国内外を飛び回り、この1年だけでも、天文学、物理学、化学のスペシャリストとディスカッションし、各領域に応じた高速化を見出そうとしている。だが、目指すのは"プログラムを高速化させる職人"ではない。

「情報科学の専門家しかそれができないなら、そこに科学の各分野の発展が左右されてしまいます。わたしは、これまで情報科学者の専売特許だったコンパイラを、専門分野の人たちがそれぞれ自分の知識に基づいて、専用で自ら作れるようなベースをつくりたいんです」

まずは専用の言語をつくり、人間と計算機が対話しながら適切なプログラミングができる仕組みをつくる。夢のような話だが、中村さん、「かなり手ごたえはあります」と力強く言った。

中村さんが所属する平木研究室でつくったオリジナルの基板。自身の「コンパイラの最適化の仕組みを追究する」というテーマとは直接は関係ないが、「情報科学を象徴するものですから(笑)」。実はファンの下にあるプロセッサも平木研究室で開発し、2010年に省電力で世界一になったもの。なるほど研究室には、基板や謎のマシンがゴロゴロしている。

photo/稲田 平