大学院進学がちょっぴり心配なキミのためのQ&A

大学院進学がちょっぴり心配なキミのためのQ&A
修士・博士の学生を理学部はこんなふうに応援します。
Q1
修士・博士課程に進みたいのですが経済的な面が心配です。
奨学金など、どんな支援が受けられるのでしょうか?
A 多くの奨学金制度や経済的支援のシステムがあるので、心配はいりません。

博士課程よりも前の東大独自の奨学金制度はありませんが、大学院に進学した学生の多くが、日本学生支援機構や民間の財団などからの奨学金を得ています。とくに民間の財団による奨学金制度の数は増える傾向にありますので、奨学金が得られないということはまずないとみてよいでしょう。その点に関しては、安心してください。

奨学金については、学部・学科の事務の相談窓口を訪れれば、各学科の奨学金担当の先生から具体的なアドバイスを受けられます。最近の奨学金制度には、成績によっては利子が課せられないなど、さまざまなものがありますので、担当の先生から提供される情報はとても役立つはずです。

実際は、修士課程から博士課程に進むときに、奨学金制度を利用しはじめる学生が多いようです。博士課程になると、親から得ていた援助が受けられなくなるというのが大きな理由です。

博士課程に進学する学生の多くが、日本学術振興会の特別研究員制度に応募し、特別研究員DC1あるいはDC2に採用されています。DC1は全国で700名、DC2は1000名の博士課程の学生に対し、前者が3年間、後者は2年間、月額20万円の奨励金が支払われます。毎年多くの理学系研究科の学生が、この特別研究員に採用されています。

また、東京大学では博士課程研究遂行協力制度という月額3万円(年間10ヵ月)の支援を、博士課程の学生の約7割に対して行う制度があります。

さらに、奨学金以外の支援制度として、ティーチング・アシスタント(TA)のシステムを利用し、学部の学生を教える先生の補助をすることで大学から奨励金をもらうこともできます。TAとして勤めた時間によりますが、平均して月額4〜5万円ほどになるようです。

現在行われているグローバルCOEプログラムでも7〜8万円の奨励金が支払われていますが、これから始まるプログラムでも同様のことが検討されるはずです。

欧米では大学院の学生は研究者として給与をもらうのが当然となっています。日本はまだ欧米のレベルには達していませんが、さまざまな支援制度が生まれ、ここ数年で欧米のシステムにだいぶ近づいてきました。

以前とはくらべものにならないほど、手厚い経済的支援が受けられるようになってきましたので、安心して修士・博士課程への進学を目指してください。

Q2
リーディング大学院という支援制度が新しく始まると聞きました。
どういうシステムなのですか?
A 優れた学生を博士課程修了まで支援する、選抜によるコースです。

「フォトンサイエンス・リーディング大学院(ALPS)」コース紹介

フォトンサイエンス・リーディング大学院のコースのあらましです。修士課程1年の半ばで応募を受けつけます。選抜後、修士課程1年の冬学期から支援がスタートします。

これは正しくは「フォトンサイエンス・リーディング大学院」と言い、英語名のAdvanced Leading Graduate Course for Photon Science の頭文字をとってALPSと呼ばれています。広い視野を持ち、新しい世界を切り開くことのできる未来の研究者を育てようという目的で、優れた学生を選抜して修士から博士課程まで一貫して経済的に支援するコースです。

ただし、「フォトンサイエンス」という言葉から推測できるかもしれませんが、このALPSのコース生になれるのは理学系研究科物理学専攻と化学専攻、そして工学系研究科物理工学専攻に所属する学生で、しかも広い意味での光科学研究の分野で博士の学位を取得しようとする者に限られます。

ALPSコース生に選抜されると、修士1年次の冬学期から博士課程修了まで月額20万円の奨励金が支給されます。

応募制で、選抜は修士課程に進学して半年後におこなう面接(自分の研究のプレゼンテーションをしてもらいます)の結果に、大学院入学試験の点数などを加味しておこないます。博士課程まで進むという意志があることが条件で、経済的な不安から博士課程へ進もうかどうかためらっている学生の背中を、ポンとおしてあげようという意図でもあるのです。

また生命系でも同様なプログラムが立ち上がっており「ライフイノベーションリーディング大学院(Graduate Program for Leaders in Life Innovation)」と言い、GPLLI と呼ばれています。

GPLLIは医・工・薬・理の4部局で構成され、理学系研究科では生物化学専攻と生物科学専攻が参加しています。

他の専攻も同様にリーディング大学院に申請をしようという動きが広がっています。近いうちに別のテーマで、さまざまな学科を横断するような「リーディング大学院」がいくつも誕生することになりそうです。どうぞ、ご期待ください。

Q3
博士課程を終えたらポスドクとして
働くことになると思うのですが、将来が心配です。
A ポスドクは研究者として生きるための大切、かつ必要なキャリアパスなのです。

2年から3年の任期で大学や研究所に雇用されるポスドク — 英語のpostdoctoral fellowの略称からそう呼ばれることの多い博士研究員ですが、確かに一般企業での契約社員のようなイメージがありますので、不安に思う皆さんも多いことでしょう。実際、短い任期で新しい職場を探さないといけないので、たいへんではあります。でも、ポスドクとは、あなたが研究者として鍛えられ、そして将来のより責任あるポストへとつながるための、これはとても重要で、なおかつ必要なステップなのです。

欧米においてはこのポスドク制度は当然のキャリアパスとしてシステムの中に組み込まれていますが、日本ではまだ当たり前のステップとして見られてはいないようです。そのせいか、ポスドクになったら最後、研究者としての道しか残されず、途中で一般企業に就職することもできなくなるのではないかと心配する学生や保護者の方もおられるようです。

実際は、ポスドクを体験してみたところ、自分は研究者よりは違う仕事のほうが向いていると思い、企業に就職したという卒業生が毎年一定数おり、決して珍しいことではありません。

ポスドク経験者の受け入れに、最近の企業は積極的です。博士課程を修了してからも研究生活を続けたという、その専門性ばかりでなく、粘り強さや人間的な強さが評価されているようです。

大学側も、ポスドクから一般企業への就職に際しては、積極的な支援をおこなっています。ポスドクとしてのポジションを探すだけでなく、就職先についても、指導教員は責任を持って相談にのっていますので心配はいりません。

ただし、心構えとしては、博士課程修了後、ポスドクとして働くことは研究者として生きる道を選択することなのだと自覚することが大事です。

text/太田 穣