理学のたのしさ

理学のたのしさ

理学系研究科長 理学部長 山本正幸

私たちが暮らすこの世界、この自然には、人間には揺るがすことのできない、純然たる「ルール」が存在しています。 それを解明していくことが、理学における研究の根本であり、私たち理学研究者の目標です。 そして研究者は、人間の能力で可能な限り思考を突き詰め、それを解明することを目指すのです。 こうした研究者の姿は、ある意味、自分の能力を極限まで追求する、スポーツ選手たちの姿に近いでしょう。 

興味のある理学の世界にぜひ飛び込んで、積極的に研究に取り組んでほしいと思います。 とはいえ、皆さんの多くはまだどのような分野に興味を持っているのか、自分でも把握しきれていない状態ではないでしょうか。 そんなまっさらな白紙のような皆さんにこそ、無限の可能性が眠っているのです。

例えば、早朝に草原を歩いたときに感じた、朝露の香りを調べてもいいかもしれませんし、私たちの住むこの宇宙はたった1つの存在なのだろうか? などといった漠然とした疑問を追究してもいいでしょう。 そんな広い視野から、自分の知らないこと、知りたいことを通じて、「知識の先端を目指す姿勢で理学と向き合ってほしい」と思うのです。 もちろん、いきなり研究の最先端に躍り出ることは無理な話です。 教科書や先人の研究成果を知識として吸収し、それを積み重ねていくことで、まだ見ぬ理学という学問の最先端、「フロンティア」を目指すことになります。

私が理学を志したのは、「生物はどういう原理で存在しているのだろう?」という素朴な疑問を突き詰めて理解したかったからです。 中学高校時代にアマチュア無線が趣味だった私は、「メカニカルな側面から自然を研究してみたい」と思ったのです。

実際に私が飛び込んだ生物学の世界は、理論的で整合性がある、美しい世界でした。私が抱いたようなたわいもない想いが、研究を通じて人類全体の英知に結びつくことが大いにあり得ます。 それが理学における研究の醍醐味なのです。 本誌では、東京大学理学部・理学系研究科における様々な研究を取り上げて紹介しています。 掲載されているものが研究のすべてではありませんが、いずれも自然に対して真摯に取り組む研究者たちの姿とその研究内容がくわしく紹介されています。 本誌を手にした方が、理学に興味を抱いてくれることを楽しみにしています。

東京大学大学院理学系研究科長 理学部長 山本正幸