西暦1900年の本郷キャンパス

「西暦1900年の本郷キャンパス」

福村 知昭(化学専攻 准教授)

本学の本郷キャンパスは都心の割に広大で建物も多い。建物は新旧さまざまで,つねにキャンパスのどこかで建物の新築や改修が行われている。現在,弥生門の近くに工学部の新3号館ができつつあるが,理学部でも秋から化学西館の改修工事が始まる予定である。何はともあれ,改修工事は準備が大変である。まず,工事期間中の研究室の引越し先を探して,現在の研究活動をできるだけ維持しなければならない。そして,改修後の研究室の仕様を決める必要がある。部屋の仕切り,装置の配置,電力容量,コンセント位置,等々。空調設備といった建物全体のインフラも省エネ・CO2削減の観点からきわめて重要である。各研究室の細かい仕様から建物全体のインフラ,さらに安田講堂の背後にそぐう建物の景観まで,建物を1棟建てるというのは,とても大がかりな作業である。今も,迫りくる移転や工事のために,多数の関係者が日々準備に追われている。そのような中,目にしたのは、 明治30年代の東京帝国大学の写真帖 である。写真は赤門付近の風景で,現在の赤門よりも気のせいか,荘厳に見える。空は広く,本郷通りの人々の往来から,のどかな雰囲気が伝わってくる。写真帖には多くの写真があり、庭園の中に建物が点在するという趣の優雅なキャンパスを垣間見ることができる。このようなゆとりのあるキャンパスは現在の都心には到底のぞめないであろう。今日のようなヒートアイランド現象もないので,冷房設備はなかったのではなかろうか。かつて,都心のキャンパスが次々と郊外に移っていったが,持続的発展の観点からは都心に残ったキャンパスと郊外に移ったキャンパスのどちらがよいであろう。そして,本郷キャンパスの今後はどうなるであろうか。

図1

1900年(明治33年)の東京帝国大学の赤門付近の風景(東京大学総合図書館所蔵資料)

図2

2013年現在の赤門付近(撮影協力:大山堂書店)