「理學部會誌」を知っていますか?

「理學部會誌」を知っていますか?

横山 央明(地球惑星科学専攻 准教授)

図1

「理學部會誌」第1号の表紙

理学系研究科のウェブサイトには,理学部ニュースのバックナンバーが掲載されている。その第1巻1号は1969年1月に発行された。ところがよく調べてみると,どうもさらにその前身となる雑誌が一次期発行されていたことがわかった。誌名を「理學部會誌」といい,第1号は1924年11月発行で,1942年の第20号まで続いた。目次にもあるように,記事の内容は肩のこらない随筆が多い。執筆者には,寺田寅彦や中谷宇吉郎の名前もみられる。発行元である理学部会なる組織は,会則によると,「東京帝国大学学友会の支部にして」とあり,どうやら同窓会であったようである。したがって,必ずしも理学部ニュースの直接の前身というわけではないのかもしれない。しかしいっぽう「事務室より」というページには以下のような記載がある。

「理学部出身の先輩にして,在学中貸費未納の額が,大正13年7月現在調によると,6千余円に達している。返納金の延滞については会計検査院では,強制的に催促回収せよとまでいっているそうです。これは官庁事務上止むを得ざることですが,一方理学部では,昨年の大震災のために,3百余名の学生中,約50名の罹災学生をいだし,加うるに,近年物価の高価なるために,学資に僅かの余裕もないので,,,,先輩諸君にして未納の方は,後輩が現在,学費にいかに困難しつつあるかということをお察し下さい。又学部が事務上,いかに体面が悪いかということをお察し下さって,徳義上,少額のお方は,一時に完納し,多額の方にあっては分納でもよろしいから,どうぞご返納を願います。」とまあ,事務室からの悲鳴が載っている。ここにある「大震災」とはもちろん関東大震災のことをさす。続く第2号では,震災による建物の損害状況などが記載されている。「震災で最もひどい損害を受けた物理の本館は,只今は事務室と,実験の器械を置く室だけが居残って他は全部化学の新館の裸のコンクリートの中に移って居る。,,,講義は本館前の恐ろしく汚いバラックで数,物,天揃ってやっている。」