変えるもの変えないもの,大切なこと
横山 央明(地球惑星科学専攻 准教授)※前・編集委員長。右の数字は編集委員長在任期間(歴代第2位)


理学部ニュース発刊50年,おめでとうございます。このように長く続いているのは,現役編集委員や先輩委員の方々のお力あってのことだと思います。

私は編集委員を,途中2年の中断をはさんで, 2005年5月号から2018年3月号まで11年のあいだ務めさせていただきました。牧島一夫編集委員長や加藤千恵さん・小野寺正明さん・武田加奈子さんや横山広美さんたち広報室のスタッフ,それから編集委員のみなさんとの編集作業は,たいへんながらも理学部のさまざまな分野の研究や,専攻ごとの考え方の違いなどにふれられてたいへん勉強になったものです。

この期間で,もっとも大きなできごとは,2011年3月の東日本大震災と福島第一原発事故でした。海外長期出張直後の私は当時実は編集委員ではなかったのですが,急遽お手伝いとして震災特集号の編集会議に招集されたのです。その特集号では,連載「理学のキーワード」欄で放射線関連の言葉を掲載することになり,「放射線と半減期」 「放射線に関する単位」「生態系における濃縮」「体外被曝と体内被曝」「大気中での拡散」「海洋中での拡散」などが選ばれました。当時,事故放射線に対する考え方や,原発に対する姿勢で,研究とは違った側面から科学者がさまざまに評価されているような状況でした。記事執筆依頼のときの私のメールには「あくまでも『理学研究から責任をもって述べることができること』に限定していただければ結構でその意味で一般的な記述になってもかまいません。『可能な範囲で社会に情報提供する』というのが背景にある趣旨です」とあり,とても慎重に編集作業をすすめていたことが伺えます。いささか保守的な姿勢だったかもしれませんが,「責任をもって」という態度は広報においてはとても大切だと感じ,この考えはその後の私の広報や編集の姿勢を方向づけたと思います。

もうひとつ,内容的には内輪の話になってしまいますが,私の編集委員長就任期間にあった,理学部ニュースにとってのいちばん大きなできごとは,2015年5月号での誌面デザインの刷新です。武田加奈子さんと横山広美さんとが軸となってすすめてくださり,質実剛健な理学部ニュースの雰囲気を残しつつも,よりプロフェッショナルなデザインとなりました。実はそのさいに,「理学部ニュース」という名前も変えよう,という提案もあり,編集委員会でさまざまな候補を挙げ,いよいよ最終決定というところまでいきかけました。けれど最後の最後に「やっぱり残そう」という大逆転がありました。2か月に1度しか発行しない冊子で「ニュース」という名前はいささか違和感があるかもしれませんが,定着した名前なので変えないほうがよい,という結論でした。編集委員長として実行した唯一の自慢できる決定です。

さて節目を迎えた理学部ニュースですが,ひいき目かもしれませんけれども,読み物として結構おもしろい。この勢いをうしなわず, 60年,70年と続いていくことを,編集委員会のみなさんに引き続き期待いたします


  図:竣震災特集号(2011年5月号)の理学のキーワー ド放射能関連の特集ページ と, 誌面刷新後の2015年5月号表紙。
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理学部ニュース2019年1月号掲載



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