「重力波で見える宇宙のはじまり」

安東 正樹(物理学専攻 准教授)


ピエール・ビネトリュイ(著)
安東正樹(監訳),岡田 好惠(翻訳)
「重力波で見える宇宙のはじまり」
講談社(2017年8月17日出版)
ISBN 978-4065020272

宇宙はどうやって始まったのだろう? 宇宙の基本法則とは何だろう? 本書は,そのような素朴な疑問に対して,現代の物理学・天文学の最先端の知見から答える一冊である。宇宙の進化を支配する「重力」を主題としており,さらに話題は宇宙の始まり,量子論や真空,ダークエネルギー,ブラックホール,そして重力波にまで広がる。そのようなイメージしにくい概念が,数式をほとんど用いずに,例え話を駆使して丁寧に説明されている。「知識」ではなく「考え方」を伝えようとする意識が随所に見られ,初めて触れる読者にとっては,何となく分かったような気にさせてくれるし,すでに勉強したことのある読者にとっては本質についての新たな発見があるかもしれない。

本書は2016年に出版されたフランス語の原著第2版を筆者(安東)らが和訳したものである。原著の論理的な記述や段落構成と,一般向け和書の流儀との違いに苦労しつつも,ブルーバックス編集部と協力しながら,できるだけ原著の雰囲気をそのまま伝えることを心掛けた。著者のピエール・ビネトリュイ(Pierre Binétruy)氏はフランスの理論物理学者。宇宙重力波望遠鏡LISAプロジェクトの推進にも尽力した。主宰した一般向けオンライン講座「Gravity!」は丁寧な語り口が評判で,世界で7万人以上が受講したそうだ。たいへん残念なことに,ビネトリュイ氏はこの和訳書が出版される数か月前, 2017年4月に逝去された。その知性と穏やかさを兼ね備えた人柄も本書から感じてもらいたい。

理学部ニュース2018年7月号掲載

 

 

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