音楽の街で理学を探究する

福本 通孝(化学専攻 博士課程1年生)

海外で研究をしてみたい。そう思い始めたのは修士2年の夏ごろ,透明で電気を通す物質(透明導電物質)に関する国際会議に初めて出席したことがきっかけであったと記憶している。透明導電物質は私の研究対象であり,ドイツで2番目に古い歴史をもつライプツィヒ大学(Universität Leipzig)で初めて発見された。その後,研究室の先生方に背中を押していただいたこともあり,ライプツィヒ大学のマリウス・グルントマン(Marius Grundmann)教授のもとで1年間研究することを決めた。

大学前のアウグストゥス広場(Augustusplats)にて(筆者)

海外滞在にあたって私が応募したのは,日本学術振興会の若手研究者海外挑戦プログラムである。本プログラムは2017年度からスタートした支援制度であり,博士後期課程学生が海外の研究機関において3ヶ月から1年のあいだ研究に従事できるよう滞在費を支給するという内容になっている。派遣先機関とのやりとりなどの諸手続きはすべて自分で行う必要がある。私の場合,プログラム採用通知が来たのは2017年12月末,修士論文を執筆している最中であった。それから2018年4月1日の滞在開始まで,修士論文と並行してドイツ語の賃貸契約書や保険書類などと格闘したことを覚えている。

ライプツィヒ大学を代表する建物。図書館が併設されている

研究室では,新たな透明導電物質を薄膜の形で作製することを目標に据え,実験を行っている。だいたいの人が朝8時頃に研究室に来て午後5時から6時頃には帰っており,短い時間で集中して仕事をこなすという生活を送っている。コーヒーブレークもあり,そこで研究室のメンバーと交流することができる。ドイツや日本のことについて広く同僚と話した経験は,「外国から見た日本」という新しい視点をもつきっかけとなった。

シューマン旧宅

休日は街の中心部を散歩することが多い。目抜き通りを歩いていると,あちこちからさまざまな楽器の演奏が聞こえてくる。実はライプツィヒは音楽の街としても有名であり,これまでバッハ,シューマン,ワーグナーなど数多くの著名人を育んできた。日本人では東京大学から池田菊苗,森鴎外が留学しに来たようである。古い街並を通り抜けつつ,かつて同じ場所を訪れたであろう大先輩に思いを馳せると,まるでタイムスリップしたような気分になる。  

日本とはまた違った環境での研究生活は,たいへんであると同時に新鮮な驚きを日々もたらしてくれる。そのような海外ならではの刺激に触れつつ,残りの滞在期間も研究を楽しんでいきたい。

 

 
2016年 東京大学理学部化学科 卒業
2018年 東京大学大学院理学系研究科化学専攻
修士課程 修了
同年3月 理学系研究科研究奨励賞受賞
現在 同専攻博士課程 在籍

理学部ニュース2018年7月号掲載

 


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