明滅するオーロラの起源をERG衛星が解明

笠原 慧(地球惑星科学専攻 准教授)

 



オーロラ発光の多くは,宇宙空間を飛び交う電子が種となっている。電子が地球大気に降り込むと,大気の酸素原子・分子,窒素分子(イオン)などを励起した後,その励起エネルギーが光として放出されることで,オーロラが発生する。今回の研究テーマである「脈動オーロラ」については,宇宙空間の電子が地球大気に向かって降ったり止んだりすることで,オーロラの明滅が起こる,ということが過去の研究で知られていた。しかし,そのような電子の間欠的な降り込みが宇宙空間のどこで,どのように起こっているかが問題であった。




   

(a) 地球のまわりの宇宙空間内で磁力線に沿って往復運動する電子。
(b) コーラス波動の電磁力により往復運動が破られ,磁力線に沿って大気に降り込もうとする電子。

(c) 降り注ぐ電子で発生するオーロラ。

 


©ERG science team

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通常,地球周辺の宇宙空間の電子は,地球磁場の磁力線方向に沿って南北運動をくりかえしており,地球の大気に降ってくることはない(図(a),オーロラは見えない)。ところが,何らかの理由で往復運動が破れ,電子が地球の大気に到達することがある(図(c),オーロラが見える)。とくに脈動オーロラの場合は,「コーラス波動」とよばれるプラズマ波動の一種が,電磁力によって電子の往復運動を破り,大気への降り込みを駆動するものと考えられてきた(図(b))。しかしながら,そのような「電子の往復運動の破れ」の現場を直接観測するには,過去の観測では角度分解能が不足しており,実証の決定打を欠いていた。

いっぽう,2016年12月にJAXA(宇宙航空研究開発機構)が打ち上げたジオスペース探査衛
星ERG(Exploration of energization and Radiation in Geospace)が搭載している電子分析器は,上記の問題に終止符を打つのに十分な角度分解能をもつものである(筆者がそのように設計した)。打ち上げ後の観測が始まって間もない2017年3月,脈動オーロラが出現している時間帯のERG衛星のデータを解析したところ,間欠的に発生するコーラス波動と同期するようにして,降り込み電子の量も大きく変動する(コーラス波動が強まると,降り込み電子が現れる)様子が驚くほど明瞭にとらえられた。これはまさに,前述のようなコーラス波動による「電子の往復運動の破れ」の決定的証拠である。

さらには,電子を観測している現場から磁力線をたどって地球大気まで行った先(=電子の降り込む先)で地上の全天カメラが脈動オーロラを視野にとらえていたという強運も手伝い,電子・コーラス波動とオーロラの強度の間によい相関があることも確認できた。このように,(1)コーラス波動の発生 →(2)波動による電子の「往復運動の破れ」 →(3)電子の大気への降り込み →(4)オーロラの発光,という一連のプロセスが間欠的に起きることで,明滅するオーロラが発生していることが,疑いようなく実証された。

本研究は,Kasahara et al. , Nature, 554, 337-340 (2018)に掲載された。

(2018年2月15日プレスリリース)




理学部ニュース2018年5月号掲載



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