中国巡検を通じて獲得したこと

福田 凱大(地球惑星環境学科4年生)

2018年2月26日から3月5日の8日間,中国の雲南省において理学部地球惑星環境学科の名物科目である地球惑星環境学野外巡検Ⅱ,通称「海外巡検」が行われ,本学から学生20名が参加した。この巡検の趣旨は,日本ではみることのできない地球科学的な現象を観察することで,地球科学に関する視野を広げようというものであり,毎年行き先は異なる。2017年の海外巡検は,担当教員の一人である多田隆治教授と雲南大学の鄭洪波(Hongbo Zheng)教授が公私にわたり親交があることから,雲南大学との総勢50人程度の大規模な合同実習となった。

今なお形成され続けているトラバーチン

巡検では,他に例を見ない,あるいは世界に数例しかない地質・古生物資料を観察することができた。巡検中の8日間は化石の資料数やチベットプレートの隆起のスケールなどに圧倒された。講義は現場で,本学の先生方と雲南大学の先生方がやってくださった。私がとくに興味をひかれたのは,主担当教員の狩野彰宏教授に連れて行っていただいた,雲南の標高3000mにある「白水台」のトラバーチン(上図)である。真っ白いトラバーチンは幻想的なだけでなく,刻まれた縞々が年々の雨量などの季節変化を保存しており,その分析によって気候変化を復元することができるという。雲南で見た澄江動物化石群は地球史において生物の種類が爆発的に増大した,地球科学最大の謎のひとつである「カンブリア大爆発」の解明の手掛かりとなる化石群である。また同じく巡検で観察したジュラ紀前期~中期の恐竜化石(下図)は世界全体でも産出数が少ないにもかかわらず,雲南では単一の種で数個体から数十個体の化石が産出しておりその種を,多少の不確実性はあれど,統計的に分析でき,またジュラ紀前期と中期の恐竜化石の骨格の比較をすることで恐竜がどのように進化していったのかを追跡できる。

発見当時そのままに保管されている恐竜化石

巡検中は,野外に出ている間以外にも雲南大学の学生と親交を深めることができた。宿では原則日本人学生と中国人学生の二人一組で同室となったが,多くの学生がさまざまな話題で盛り上がった。たとえば生物が大量絶滅した約2億5000万年前のP/T境界の植物化石の虫食いの有無や葉や枝などの大きさから,どのような虫がその植物を食べていて,そこはどのような環境だったのかを復元するという研究など,私があまり知らない分野の研究をされている大学院生や研究者の研究内容の紹介をしてもらい,逆に自分の興味関心のある地球科学の分野などを説明するなどを通じて,日本と中国の地球科学の研究の実情についてお互いに共有することができた。

今回得た地球科学的な知識だけではなく,現地の学生との国際交流など中国の地で獲得したあらゆる経験は今後の研究人生の糧になるだろう。

 

 
2015年 東京大学教養学部理科一類 入学
2017年 東京大学理学部地球惑星環境学科 進学
現在に至る

理学部ニュース2018年5月号掲載

 


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