天の川銀河バルジに新しい星のグループを発見

松永 典之(天文学専攻 助教)



「星の数ほどある」という表現から,どれほど大きな数を思い浮かべるだろうか。具体的な数字をあまり気にせずに使えるのがこの表現の便利なところかもしれないが,日頃から星の数のことを考えている天文学者にとっては,それが一万個なのか,一億個なのか,もっと多いのか気になるところである。たとえば,あかり衛星の中間赤外線全天カタログには,9μm付近の波長で検出された85万個以上の天体が登録されている。いっぽう,もう少し波長の短い近赤外線で明るい天体はさらに多く,2ミクロン全天探査カタログ(2MASS)では,5億個近い天体の色や明るさを知ることができる。これらは大きい数字には違いないが,天の川銀河には数千億個の星が存在するので,これまでに何らかの情報が得られたのはそのほんの一部である。詳しい性質を調べられる星はさらに少ない。たとえば,星の化学組成を調べるには分光観測が必要である。天体画像から一度に多数の星の明るさや色を計測するのとくらべて,分光観測でスペクトル(波長ごとの明るさ情報)を得るには多くの観測時間が必要となる。限られた装置性能や観測時間の中で,いかに面白い天体を探し出すかということが天文学者の腕の見せどころであろう。

バルジに発見した炭素すすにおおわれたミラ型変光星とそのスペクトル


私たちが調査対象としたミラ型とよばれる種類の変光星は,バルジにこれまで約6500個見つかっているが,これらすべてのスペクトルを得ることは困難である。いっぽう,ミラ型変光星は固体微粒子におおわれていることが多く,赤外線の色からその組成について(確定的ではない)ヒントが得られる。私たちは,あかり衛星と2MASSのカタログを組み合わせ,炭素すすにおおわれている可能性の高いミラ型変光星を選び出し,そのうちの36個を南アフリカ天文台の188cm望遠鏡で分光観測した。その結果, 8個の星では実際に炭素が多いことを確認できた。それらの星の距離について詳しい解析を行った結果,4個はバルジの中に位置することが確かめられた。炭素の多い星になるためには,太陽の数倍の質量をもつこと,太陽よりも重元素量が少ないことなど,いくつかの条件を満たす必要がある。それらの条件を満たす星のグループは,今回発見した星の個数から単純に計算すれば,バルジの中で0.1パーセントほど(6,500個中の4個)の珍しい存在である。とはいえ,バルジ全体の数百億個という星の個数を考えれば数千万個はあるはずのそのようなグループの存在が,これまで知られていなかったのである。天の川銀河の中心部で大きな質量をもつバルジで新たに見つかったそのグループの存在は,天の川銀河の性質と歴史について新たな情報を与えるものと期待される。

本研究成果は,N. Matsunaga et al. ,Monthly Notices of the Royal Astronomical Society , 469,4949(2017)に掲載された。 

(2017年6月21日プレスリリース)

理学部ニュース2017年11月号掲載



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