ボストンへの長いみちのり ~MIT渡航記~

小森 健太郎(物理学専攻 博士課程2年生)

早朝,標高2500m。夜行バスから立山の登山拠点である室堂へと降り立った直後,ひじょうに焦っていたことをよく覚えている。マサチューセッツ工科大学(MIT)の事務の方から,渡航手続きをしなければならない期限がすでに過ぎていることを連絡されたからだ。快晴に恵まれた立山,剱岳の3000mからの展望によってその焦りは一時払拭されたが,これに代表される渡航関連の手続きにはたいへん苦しめられた。本シリーズでは,海外での研究留学体験が語られることが多いが,本稿では少し趣向を変えて,そこに至るまでの体験談を記してみようと思う。

私は2016年の10月下旬から12月下旬にかけての2ヶ月間,リーディング大学院ALPSの海外派遣プログラムを利用して,アメリカ,ボストンのMITで共同研究を行った。MITには,今年のノーベル物理学賞を受賞したアメリカの重力波検出器LIGOのホスト機関である研究室がある。渡航の話題がもち上がったのが6月下旬。比較的ギリギリでの決定ではあったが,話がトントン拍子に進んだので縁があるのだなと思い,ALPSの海外派遣はここにしようと決めた。

アメリカの大学で研究を行うにあたって,必要となる書類は大きく2つであった。交流訪問者ビザという名前のついているJ1ビザ,および研究留学などの資格証明書であるDS2019という書類である。J1ビザの発行にはDS2019が必要であるため,先にこちらを手に入れなければならないが,まずこのDS2019を手に入れるまでが相当大変であった。MIT入学金を含む,ある定められた金額以上のお金が確保できることを証明する書類など,膨大な数の書類が必要であった。


MIT渡航にあたり必要となった書類群

書類をそろえることに苦労はしたが,もっとも困惑したでき事は,冒頭でも述べた,渡航手続きの期限が過ぎていたということである。MITには, DS2019発効日の75日以降からのみ渡航許可を与えるという規則があった。すでに渡航予定日の75日前を過ぎてしまっているため,予定日からの渡航を許可するDS2019を発行できないというメールを受け取ったのが立山の室堂である。このときはひじょうに慌てたが,何度も渡航日を変更したくないという意思を示し続けた結果,事務の方およびMITの配慮により,予定日からの渡航を許可するDS2019を発行していただけた。

続いて,郵送されてきたDS2019をもとにJ1ビザの発行をする必要がある。こちらも,アメリカ大使館のホームページ上にさまざまな書類をアップロードしたり,情報を登録したりといった作業が数多く待っていた。最後にアメリカ大使館に赴き,面接を行ってようやくJ1ビザが手に入る。これでひとまず書類は出揃い,出発日を待つのみとなった。


プルデンシャルセンターからボストン市街地を望む

以上いくつか苦労話をしたが,小さなものを含めれば無数にできそうである。しかしこれらを経て訪問したボストンやMITの研究室での生活は本当に素晴らしいものであった。確かに準備には苦労させられたが,心から行って良かったと思えた。やはり海外での滞在というのは代えがたい経験である。これから比較的長期の留学などを考えている学生の方々が留学中少しでも気もちよくいられるよう,手続きはできるだけ早め早めに進められることを祈りつつ,結びの言葉とさせていただく。

 

 
2014年 東京大学理学部物理学科 卒業
2016年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程 修了
専攻修士課程 修了
現在同博士課程在籍
2014年~ フォトンサイエンス・リーディング大学院コース生
2016年~ 日本学術振興会特別研究員 DC1

 

理学部ニュース2017年11月号掲載

 


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