「宇宙流体力学の基礎」

横山 央明(地球惑星科学専攻 准教授)


福江 純,和田 桂一,梅村 雅之 著
シリーズ宇宙物理学の基礎 第1巻
「宇宙流体力学の基礎」
日本評論社(2014年)
ISBN 978-4-535-60340-0

宇宙物理学は,さまざまな天体を扱う。個別の天体や,そこで起こる現象については多数の良書が内外で刊行されてきた。しかしいっぽうで,多様な現象の物理過程について共通な切り口で,理論的・観測的に詳細に切り込んだ教科書は少ない。この「宇宙流体力学の基礎」は,編者たちのそのような思いから企画された,シリーズ<宇宙物理学の基礎>の,第1巻として出版された。

本書では,球対称流れ,音波・重力波,衝撃波などの基礎的な流体物理が扱われるいっぽうで,ふんだんに天体現象の実例が説明されている。たとえば,天体大気の章では太陽コロナと同時に近接連星の形状を扱い,重力不安定の章では銀河の渦状構造に触れ,かと思えば太陽風と宇宙ジェットとが同じ章で説明される,というように縦横無尽に記されている。ただし,その背後には,宇宙流体という共通の物理的視点で貫かれているため散漫的な印象はいっさいない。

さてこのシリーズは続巻として,第3巻「輻射輸送と輻射流体力学」が出版されており,電磁流体・放射素過程・シミュレーション・一般相対論と,第6巻までの刊行が予定されている。わたし自身も第2巻電磁流体の著者のひとりで,共著者ともども鋭意執筆中なのでそちらも期待されたい。

本書は,宇宙物理学研究をこれから始める学部生・大学院生には最適な教科書で,対象ごとに狭い分野にとらわれることなく,俯瞰的視点から新分野を開拓していく役に立つことと思う。

理学部ニュース2017年7月号掲載

 

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