横浜サイエンスフロンティア高等学校
-その目指すところ-

和田 昭允(東京大学名誉教授)

 

東京大学理学部での物理化学研究室での経験と生物物理学研究室の立ち上げ,理化学研究所でのゲノム科学,その間いくつかの国際プログラムを立ち上げた経験などを踏まえて私がたどり着いたのが,横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校の創設である。

2002年横浜市から,理化学研究所のゲノム科学総合研究センター所長をしていた私に,市が創る科学技術高等学校の設立企画委員会メンバー就任の誘いがかかった。

委員会で私が強調したのは,これまで日本の何処にもなかった高校を創ろう,そのために「サイエンス」と「フロンティア」を正式に校名に掲げることだった。前者については,対象範囲が狭く応募者が少なくなる,後者では,辺境の地という意味があるから如何なものか,という反対があったが,私が「今の日本には,サイエンスの最前線(フロンティア)を見据えた,世界的に評価される高校が求められているのだ」ということで,全部反論・説得して現在の校名に落ち着いた。これでひと安心と思い,市が用意してくれた豊富な予算で電子顕微鏡や液体クロマトグラフィーなど高度の実験装置を揃え,実験を大幅に取り入れたカリキュラムにしたところ,また「奇をてらうものだ」とか「公立高校に国際性は不要だ」などという,見当違いで低次元の横槍が入った。新しいことをするとすぐに足を引っ張る日本人の悪いクセだ。それらも横浜市教育委員会や,応援団になって下さっている大学・企業の方々の絶大な後押しを受けて,さしたることもなく切り抜けた。

2009年に第1期生を迎えてから今年で9年になり,英米などの高校との交流など多くの国際プログラムを進めている。そのひとつに, 2学年後期に240名全員が,同じくサイエンスに力を入れているマレーシア高校で,一人ひとりが英語のポスター発表をするという,大学でもしていないような行事もある。すでに国際的に高く評価されており,ケネディー駐日大使が視察にこられ,オバマ米国大統領の第1回目の訪日のさいには,生徒4名が招待され,親しくお話しをしてきた。

サイエンス関連の部活動も盛んで第1期生からユニークな実験結果を発表し,国際金賞も含めて多くの賞を取り,その結果が高校の玄関に張り出されて後輩を元気づけている。具体的には,国際賞は2012年度地学国際オリンピック金メダルなど6件,国内受賞は75件。加えて体育系では,水泳部の高校総体出場2件とボクシング部の関東大会出場が6件あり,勉強一点張りのひ弱い高校では決してない。

これらの実績が認められて文科省から,スーパーサイエンスハイスクールとスーパーグローバルハイスクールの称号がダブル授与された。なお今年から中学部が発足,8倍の入試倍率で2学級80名(男女40名ずつ)の諸君が入学した。高校で入学する160名と混じって,異なった経験を交換しながら切磋琢磨することになる。

私は授業はしない,というか,もうする能力はない。でも常任スーパーアドバイザーとして毎週一回放課後,生徒諸君とアフターヌーンティーをとり,サイエンス談義をする。欧米の大学で習慣になっており,私も理学部物理学教室で「和田サロン」と称して開いたものだ。そこでの彼・彼女らの輝く眼に,サイエンス日本・科学技術日本の将来の希望を見るのは楽しい。
参考: <http://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/hs/sfh/

 

※1989年度東京大学理学部長,理学部広報(理学部ニュースの前身)元編集長(1970--1972年)

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理学部ニュース2017年7月号掲載

 



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