地底深くに生息する微生物の代謝活動を検出

鈴木 庸平(地球惑星科学専攻 准教授)



地底は我々の足下に広がる身近な世界である一方で, 実はそこに生命が存在し巨大な生態系を形成しているか未だに謎のベールで包まれている。地底は鉱物の集合体である岩石から構成されており, 有機物や酸素に富む地表から隔離された岩石の間中に微生物は極貧栄養状態で生息していると予想されている。その予想を元に推定した生物量は,地球全体の30%程度を占めると指摘される。

しかし,地底の生命の姿を捉えるためには,厚い岩盤を貫くと同時に地表の生物や栄養分を混入させない汚染対策が必要になる。一般的に,地下深部から石油や天然ガス等の資源を回収する際に地上からのボーリングを行うが, この方法では微生物の汚染を防ぐことは不可能である。「もぐら」のように地底に直接行って試料を採取できれば問題が解決できる,という発想からこの研究は開始された。

国内で大型地下研究施設を有する岐阜県瑞浪超深地層研究所は,深度500メートルまで人間が直接アクセスして,掘削調査が可能である。この地下施設を用いて地底生命の解明を目指した訳であるが, 更なる障害が立ちはだかった。地下からの掘削でも, 地上からと比べると格段に汚染は低減できるが, 完全に汚染を排除できないのである。 掘削後にその影響が無くなるまで経時変化を調べる必要がある。


  瑞浪超深地層研究所用地内に建設された大型地下研究施設のレイアウト図。 深度 200メートル,300メートル,400メートルの掘削孔から採取した地下水を用いて研究が行われた。イラストは亀裂中での微生物代謝示す。

そこで,掘削した直後から掘削孔の地下水を6年間に亘り採取し,20種類を越える化学成分の分析を継続した。その結果, 地上からの有機物がほとんど到達しない地底深部で, 微生物が有機物以外の何か(溶存ガスの水素が第一候補)を食べながら硫酸塩イオンで呼吸していることを明らかにした。現在,何を食べているのかは究明中であるが, 非常にゆっくりとした速度で呼吸していることも判明した。我々が呼吸で用いる酸素と比べて,硫酸塩イオンを用いた呼吸で得られるエネルギーは僅かなため, 単純に増殖速度を計算すると1000年以上をかけて1度細胞分裂することになる。これは,人類にしてみれば悠久なライフスタイルを獲得した生命体と言え, 現在微生物種の特定や, 地底深部に適応するための遺伝子群の解明を,国内外の研究者と共に行っている。

このように, 地底から直接掘削し地下水を長期観測した研究は世界初であり,Suzuki et al. PLOS One id.0113063(2014)に掲載された。

(2014年12月18日プレスリリース)



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