「海洋地球化学」

蒲生 俊敬(大気海洋研究所 教授,化学専攻)


(編・著)蒲生俊敬「海洋地球化学」
講談社(2014 年)
ISBN 978-4-06-155237-1

地球環境は,いま確実に変化しつつある。地球の表面気温は今世紀末には平均 1~3℃上昇する可能性が高いといわれる。産業革命以来,人類は大量の二酸化炭素を大気中に放出してしまった。今後も放出し続ける以上,温暖化は避けようがない。ところで地球表面の 7割は海である。熱容量の大きな海は,大量の熱をため込み,気候を支配している。海から目をそらせたら,今世紀の地球とはつきあって行けない。海について科学的知識のあるなしが,今後,重要な局面での意思決定を左右することになるかもしれない。

海洋に存在する化学物質の分布や挙動を正確に記載し,それらの意味するところを読み解き,海洋環境を構成する複雑な因果関係や維持機構を解明しようとするのが,「海洋地球化学」と呼ばれる学問分野である。本書は,その広範な研究対象の中から,初学者にとって特に重要と思われる項目を厳選し,平易に解説することを心がけて企画・執筆された。地球の重要なサブシステムである海洋は,物質やエネルギーの流れを介して,地球システム全体と強く関わっている。海水中の元素や同位体の動きは,このような海洋の営みを支えるいわば潤滑油である。

筆者は附置研究所に勤務しているので,学部生を対象に講義を行う機会は少ない。大学院は理学系研究科化学専攻で,「分析化学特論I」を隔年で担当している。ただ10数年前,北海道大学理学部地球科学科に4年ほど勤務したとき,学部3年生を対象に毎年「地球化学」の講義を行った。地球化学といいながら海の話ばかりしていたので,実質は海洋地球化学だった。本書の下敷きになったのはその時の講義録である。本書は11章からなるが,そのうち7つの章は専門家の方々が執筆を分担され,私が行いたかった講義の内容を格段に深めて下さった。これから海洋地球化学を身につけ,今世紀を生き抜こうとする大学生・大学院生によって,本書が活用されることを願っている。

 

 

理学の本棚>

 

 

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加