特集記事 旧帝国大学時代以来の学事暦変更:4ターム制導入

研究科長補佐 久保 健雄(生物科学専攻 教授)

東京大学では「学部教育の総合的改革」の一環として, 2015年度(平成27年度)から全学で学事暦が変更され, 4ターム制が導入される。旧東京帝国大学時代以来用いられてきた,現在の夏・冬学期からなる2学期制に代わる,久々の新しい学事暦の採用である。本稿では最初に4ターム制の概要を述べ,次いでその採用の経緯と狙いについてご紹介させていただきたい。


新学事暦では,1年を5つのターム(S1:4~5月,S2:6~7月,A1:9~10月S2:11~12月, W:1~2月)に分ける。タームは試験日を含む授業期間であって,本学の4ターム制には,S1・S2・A1・A2タームを授業期間として春季に長期休業期間を設けた「タイプⅠ」と,S1・A1・A2・Wタームを授業期間として夏季に長期休業期間を設けた「タイプⅡ」があり,どちらのタイプを採用するかは学部によって異なる。8月は全学共通の夏季休業,3月は春季休業である(図1)。S1・S2の2つのタームをつないだ授業期間をSセメスター,A1・A2タームをつないだ授業期間をAセメスターとよぶ。S・Aセメスターとも従来の夏・冬学期に比べて短くなったことから,同等な授業時間確保のため,従来の夏・冬学期の2単位科目が「1コマ90分の授業×15回+試験」であったのに対し,新学事暦のS・Aセメスターは「1コマ105分の授業×13回+試験」で構成される。つまり,授業回数が15回から13回に減る一方で,1コマ当たりの授業時間は90分から105分へと延長される。1限の開始時間も8:40から8:30に早まり,6限の終了時間は20:00から20:30へと遅くなる(表1)。


    表1:新学事歴での授業時間

理学部は工学部と共に2015年度はS1・S2ターム (=Sセメスター) とA1・A2ターム(=Aセメスター) を授業期間として用い,8月を夏季休業,Wタームと3月を春季休業とする「タイプI」を採用する。理学部が将来的には「タイプII」の採用を目指しながらも,2015年度は「タイプI」を採用する理由は,「タイプII」を採用するためにはWタームを利用する必要があるが,本学部では2018年度(平成30年度)に理学部1号館東棟が竣工予定であり,Wタームに教養学部2年生に対して本郷キャンパスで授業を行うためには,この1号館東棟の竣工を待たねばならないためである。また,理学部と工学部では共通な学部講義が多数あるため,理・工学部で連携して同じ学事暦を採用することとしている。なお,2015年2月に法・工・理の3学部で授業日程が一部修正され,理・工学部ではAセメスターは9月17日(木)に開始し,1月6日(水)に終了することとなった(表2)。


    図1:タイプIとタイプIIの学事暦

次に,この新学事暦が採用されるに至った経緯とその狙いをご紹介したい。2009年に着任された濱田純一総長は「よりグローバルで,よりタフな」東大生を輩出することをスローガンに,当初「秋入学」を構想された。しかし,この構想は学内の広範な同意を得るには至らず,最終的に採用されたのがこの「4ターム制導入」であった。欧米の多くの有力大学は秋入学で,6~8月にはサマープログラム(以下SP)と称する特別授業を実施し,世界中から優秀な学生の獲得を図る。この海外のSPに東大生を送り出すと伴に,海外の優秀な海外学生を東大のSPに呼び込むことでグローバル化を図ることが「秋入学」の1つの狙いであったが,「4ターム制導入」の狙いも同じである。4ターム制は将来的には,全学的に6~8月を夏季休業とする「タイプII」を採用することで,海外の有力大学のSPとの効果的連携を図る目的で設計されている(図1)。

しかしながら,全学一斉に「タイプII」へ移行することは困難であったため,2015年度からこの5~6年間の「経過措置」として,SP利用に積極的な理系学部は「タイプII」,冬期に入学試験を担当し,「タイプII」採用に時間がかかる教養学部を含む文系学部は「タイプI」を採用することになった(図1)


    表2:2015年度の理学部の学事歴

なお,2015年度からは,「学部教育の総合的改革」の一環として前期教養課程のカリキュラムも大幅改訂され,理科類では卒業のため必要な履修単位数を76から63に減らす代わりに,自宅での学習時間を増やして自主的学習を促す(学びの「実質化」を図る)と伴に,理科生の1年次のSセメスターに必修科目「初年次ゼミナール」が新設される。これは1人から数人の教員による少人数授業であり,例としては研究テーマの設定,文献検索,論文読解,グループディスカッション・プレゼンテーション,レポート作成などの研究のための技法を一通り体験することで,学生自身が研究を行う上での得手・不得手を理解し,その後の学部・大学院生活に役立てて貰うことを目的とした,全く新しいタイプの授業である。

今回の「4ターム制導入」の最大のメリットは,授業期間がコンパクトになったことで,学生はより学生生活の自由度(流動性)が増し,教員はより柔軟な授業形態が可能になる点にある。特に,S2タームが単独に切り離されることで,将来的には長期夏季休業とする他にも,例えばS2タームに必修科目を設けず,海外で取得したSPの単位と互換性をもたせるなど,6~7月の多様な利用法も可能になると思われる。2015年度は五神真研究科長が総長に就任される。五神次期総長の新体制の下,今回の「4ターム制導入」が前期教養課程のカリキュラム改訂と相まって,より良い学部教育創出への契機となることを大変に期待している。

 

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