冥王星でおきたジャイアント・インパクト!?

関根 康人(地球惑星科学専攻 准教授)

 


冥王星は太陽系外縁部に存在する直径2,400キロメートル程度の天体であり,大型望遠鏡をもってしても,地球から見ればほぼ点でしかない。地球と同じ太陽系のメンバーでありながら,その実態は謎に包まれていた。

NASAの探査機ニューホライズンズは, 9年の歳月をかけて冥王星に到達し, 2015年8月に接近観測を行った。研究者の多くは,冥王星ははるか昔に地質活動を終えた,クレーターだらけの天体だと思っていた。しかし,実際の冥王星を見ると,ハート形の窒素の氷河や氷の山など,多様な物質や地形に彩られていた(図)。このような多様な物質で彩られた冥王星の姿は全くの予想外であり,一般の人々も驚かせるニュースとなった。

そのような多様な地形の中で,ひときわ目を引くのが赤道域に存在するクジラのような模様の,褐色に彩られた領域―クトゥルフ領域である。クトゥルフ領域は幅およそ300km,長さおよそ3,000kmに広がる。どのような過程でこのクトゥルフ領域ができたのだろうか。

探査機ニューホライズンズがとらえた冥王星(右下)と衛星カロン(左上)の姿(色は強調されている)。冥王星の右半分にハート形の窒素の氷河がみえ,左下に褐色のクトゥルフ領域が見える。(画像提供 NASA)


われわれは,クトゥルフ領域がどうできたのかという謎に関して,冥王星の月であるカロンの形成に注目した。カロンの直径は冥王星の約半分であり,これほど大きな衛星をもつ天体は,太陽系では冥王星と地球しかない。このカロンの起源として,地球―月と同様,巨大な天体が冥王星に衝突した際に,その一部が月となったジャイアント・インパクト説が提唱されていたが,仮説のひとつであり証拠にかけていた。

われわれは,冥王星に巨大天体が衝突し,衛星カロンを作った際に実際に何がおきるのかを調べた。その結果,ジャイアント・インパクト時には,クトゥルフ領域と同程度の領域が50℃以上にさらされることがわかった。冥王星の表面温度はマイナス230℃程度であり,周囲からくらべればかなりの高温熱水プールが表面にできることを意味する。その熱水プールでは,冥王星にもともと存在する分子種が活発な化学反応を起こし,褐色の有機物を生成する。つまり,クトゥルフ領域は,かつてカロンを作ったジャイアント・インパクトの痕跡だったのだ。

太陽系初期において,内側太陽系では, 20個以上の原始惑星がジャイアント・インパクトをくりかえして,現在の水星,金星,地球,火星ができたとされる。今回の研究は,太陽系初期には地球形成領域から太陽系外縁部にわたって,ジャイアント・インパクトが頻発する大変動があり,これを経て太陽系は現在の姿になったことを示唆する。。

本研究は, Y. Sekine et al., Nature Astronomy 1, 0031(2017) に掲載された。

(2017年1月31日プレスリリース)

理学部ニュース2017年5月号掲載



学部生に伝える研究最前線>

 

 

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