なにげなく当たり前だと思っていた世界が,実はかなり特殊な世界かもしれない。これまで想像もしなかった別世界の存在を知る。科学者は物理や化学の知識を総動員してその世界の成り立ちを説明してみせるが,その理論を覆すような新たな世界がまた姿を見せる。まるで自然に弄ばれているようだ。われわれの持つ世界観が大きく変わる。それが理学の面白さだ。

約20年前まで,人類は太陽系という惑星系しか知らなかった。太陽という中心星のまわりに,内側から水星・金星・地球・火星という小さな岩石惑星,木星と土星という巨大なガス惑星,天王星と海王星という氷から作られた惑星が並んでいる̶これが太陽系である。1985年に京都大学の林忠四郎らの研究グループが提案した太陽系形成標準理論(京都モデル)に基づけば,この太陽系 の構造は物理的に当然の結果として形成される。

   
系外惑星のサイズと中心星からの距離の観測値(データ元:www.
exoplanets.org)。参考のために,太陽系の惑星(水星と火星を除く)のデータも載せた。(太陽系の惑星が存在するような)右下部分に系外惑星のデータがないのは,観測限界を下回っているためであり,実際に存在しないかどうかは不明である。

しかし,1995年に太陽とは別の恒星まわりに惑星(系外惑星とよぶ)が発見されて以来,惑星形成理論は何度も修正を迫られることになった。最初の10年間に発見された惑星は木星のような巨大惑星であるが,そのほとんどが中心星にきわめ て近いところを周回してい(図)。このような惑星はホットジュピターとよばれる。さらに,ここ10年の宇宙望遠鏡などによる大規模な系外惑 星探索計画によって,その発見数は飛躍的に伸び,新たな事実が明らかになった。それまで脚光を浴びていたホットジュピターはメジャーな存在ではなく,スーパーアースとよばれる地球サイズより少し大きな惑星が圧倒的多数を占めるようだ。

こうした惑星は京都モデルの枠組みでは決して作られない。そもそも太陽系を説明するために作られた京都モデルでは,惑星は現在の場所で生まれたということを大前提としてきた。しかし,その前提は明らかに間違っており,惑星は形成期に大移動を経験するようだ。ホットジュピター発見以降,理論的な進歩もあり,惑星の移動機構はいくつか発見された。しかし,問題は簡単ではない。図から分かるように,ホットジュピターは確かに相当数存在するが,木星や土星のように中心星から離れた巨大惑星(クールジュピター)もかなり存在する。また,スーパーアースという天体はそもそも太陽系には存在せず,それが岩石質の惑星なのか,氷でできた惑星なのかさえわからない。こうした多様性をもたらす原因は何か大きな謎である。また,太陽系では大移動は起こらなかったのか。太陽系形成の問題も振り出しに戻ったというべきである。

次の10年は系外惑星科学の第二次黄金時代といえるだろう。これまでの惑星探索によって宇宙における惑星系の普遍性と多様性が明らかになった。次は,惑星個々の特徴を詳細に調査する段階である。たとえば,惑星の大気や水の有無,さらにそれらの成分を特定する。そのために,次の10年で少なくとも5つの宇宙望遠鏡の打ち上げが予定されている。そして,その先にいよいよ第二の地球,生命探査の時代が待っている。われわれの理論が証明されるのか,また覆されるのか。次の10年を担う若い人材とともにさらに自然に挑戦していきたい。

理学部ニュース2017年5月号掲載

 

 

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