研究科長・学部長あいさつ



本2015年3月をもちまして,理学系研究科長・理学部長を退任いたします。一年間という短い期間でしたが,教員,職員そして学生の皆様のご支援とご協力をいただき,職務に取り組むことができました。深く御礼を申し上げます。

理学の目的は,自然の普遍的な原理を探求し,その知見を人類の共有財産として積み上げていくことにあります。研究科長としての研究科運営にかかわる中で,私の専門以外の様々な分野についても,その研究と教育の最前線に触れる機会を得ることができ,東京大学の理学研究の広がりと奥深さを改めて実感いたしました。小石川植物園の温室の建て替えの議論のなかで,植物園が長年培ってきた研究の話や,天文の木曽観測所訪問などが大変印象に残っています。

教育面では,講義をすべて英語で行う編入プログラム「グローバルサイエンスコース(GSC)」を開始したことは,大きな出来事です。化学専攻の先生方の並々ならぬ熱意のたまものです。初年度の学生として,中国・米国から 7名の留学生が化学科に編入学しました。学部課程を2年以上修めた留学生を学部3年生に直接編入させる制度は,東京大学としても初の試みです。理学研究は本学創立以来,長年培ってきた伝統があり,ここで理学を学ぶことを希望する学生は海外にも多数います。そのような学生に新たな機会を提供する仕組みができたことは,大変意義があると思っています。グローバル化が進む中で今後の発展が大いに期待されます。

いっぽう,この一年間は,科学者の研究倫理のあり方が問われ,注目された年となりました。理学部・理学系研究科では,他部局に先がけて,研究倫理教育を強化することに取り組みました。学部と大学院全体を通じた共通科目として,選択科目「研究倫理」を新設し,来年度からは,これを学部および大学院の必修科目として位置付け,更なる充実を目指しているところです。科学が社会から信頼されるためには,研究者がプロとしての自覚と誠実さをもって活動しなければなりません。これは,どんな熾烈な研究競争の中であっても,最も重要な前提です。理学の教育において,その大切さを次代の人々にしっかり伝えていかなければなりません。

大学と社会の相互の信頼を高める為には,大学の研究成果を社会に伝え,さらに社会での価値創造につなげていくことが大切です。専ら基礎研究を行う理学も例外ではありません。大学と産業界が連携して,「知の探求」から「知の活用」につなげ新しい価値を生み出すことは,理学にとっても非常に良い刺激となるはずです。世代や地域を超えて,様々な人々が協働する「知の協創の場」を創っていきたいと考え, 2つのイノベーション拠点事業に理学系研究科として積極的に取り組み,活動を始めました。

大学における価値創造を支える,環境の整備も重要です。長年の懸案であった,1号館Ⅲ期(東棟)工事がいよいよ始まることになりました。理学部・理学系研究科の総合図書館化,講義室の拡充による教育の機能強化等を図る計画で, 2016年末の竣工を目指して着々と作業が進められています。

運営面では,工学系研究科との連携を一層強化する体制を創りました。これまでも理工連携キャリア支援室を開設するなどの活動をしてきましたが,本年度より両執行部合同の理工懇談会を毎月開催し,教育改革や研究組織などを両研究科の強い連携のもとで進めることが出来るようになりました。

東京大学は,世界を牽引する卓越した研究とそれを通じた優れた人材の育成によって,世界に新たな道筋を示していくという責務を担っています。この理学部・理学系研究科をその中軸とし,東京大学が世界の頭脳が集う拠点としてより発展することを願っています。

擱筆するにあたり,本学部運営に常に献身的に奔走していただいた執行部メンバーの皆様,各委員会の皆様,専攻長・学科長・施設長をはじめ教職員の皆様に敬意を表したいと思います。皆様のご支援によって,研究科長・学部長としての職務を全うできましたことに心より感謝申し上げます。4月からは,本学全体の発展に向け,総長として力を尽くしたいと思っております。引き続きご支援とご協力をお願いいたします。

 

 

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