化学専攻の3名が,第33回井上学術賞・井上研究奨励賞を受賞

広報誌編集委員会

化学専攻の磯部寛之教授が第33回井上学術賞を受賞されました。自然科学の基礎研究で特に顕著な業績を挙げた研究者に贈られる賞です。また,同じく化学専攻の,池本晃喜助教・井元健太特任助教のおふたりが井上研究奨励賞に選ばれました。自然科学の分野で過去3年間に博士の学位を取得した人で,優れた博士論文を提出した研究者に対し贈呈される賞です。ご受賞されたみなさまに心からお祝い申し上げます。

磯部教授の受賞理由は,「大環状芳香族炭化水素の合成・構造化学研究に立脚した新現象・新材料の開拓」でした。磯部教授が展開したナノカーボン分子の設計・合成およびその機能開発研究を対象としたもので, 2015年度の日本化学会学術賞に引き続いてのご受賞です。「芳香族炭化水素を輪状に連ねることによって巨大ナノカーボンを模す」という着想のもと,拡張π電子系前駆体の合成や環状化反応を工夫し,多様で新しい幾何学的構造を持つナノカーボン分子群を生み出しました。有限長カーボンナノチューブ分子からは「分子ベアリング」を構築し,固体内でのフラーレンの高速分子回転を明らかにする一方,トルエンを基盤とした有孔ナノカーボン分子では,発光量子収率100%を実現するドープ型リン光発光有機ELを開発されました。最近では,ナフタレンを基盤として,黒鉛の2倍の電気容量を実現する全固体型リチウムイオン電池の負電極材料を開発しておられます。

池本助教の受賞理由となったのは,本学工学系研究科応用化学専攻において執筆した「細孔性結晶を用いた化学反応とその場X線観測」と題する博士論文です。化学反応を直接観測するという挑戦的な課題に挑んだ研究であり,これまでの手法では観測が困難であった複雑な化学反応過程を可視化した研究成果です。この直接観測を可能としたのは,細孔性結晶に分子を閉じ込め, X線回折を活用した構造解析です。池本助教は,この手法により,細孔性結晶内で進行する様々な反応過程を,スナップショット撮影のように直接観測することに成功しています。この研究により,反応中間体の構造,遷移状態様の構造,さらには金属活性中心の構造変化が明らかとなり,溶液系の反応解析からは得難い精密な構造情報が得られました。

井元特任助教の受賞は「オクタシアノ金属錯体を構築素子とした多機能性分子磁性体」と題する博士論文に対するものです。金属イオンがシアノ基によって架橋されたシアノ架橋型金属錯体における,新規機能性の発現を目的とした研究を行いました。シアノ架橋型の鉄2価イオンが,スピンをもたない低スピン状態とスピンを有する高スピン状態の間をスイッチングするスピンクロスオーバーという現象に着目し,スピンクロスオーバーを示す鉄2価イオンを結合させることにより,光照射により常磁性から強磁性へと変化する光誘起スピンクロスオーバー強磁性体の構築に成功しました。また,二段階転移を示す光磁性体の構築にも成功し,新しい光機能性を見出しました。特に,光誘起スピンクロスオーバー現象は新たなメカニズムによる光磁性現象として,今後の光スイッチング現象に関する研究に貢献する結果であり,化学分野のみならず,光物理の分野など広範な分野に寄与することが期待されます。

 

   
磯部 寛之 教授   池本 晃喜 助教   井元 健太 特任助教

 

*この文章は,中村栄一特任教授(総括プロジェクト機構/化学専攻,磯部教授記事),磯部寛之教授(化学専攻,池本助教記事),大越慎一教授(化学専攻,井元特任助教記事)がそれぞれ執筆されたお祝い原稿を広報誌編集委員会で再編集したものです。

 

 

 

 


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