かわいい素粒子物理学を描く

秋本 祐希(higgstan.com)


PROFILE

東京大学理学部物理学科 卒業
東京大学大学院理学系研究科物理
学専攻博士課程 修了 理学(博士)
現在同博士課程在籍
マブチデザインオフィス 入社
東京大学大学院理学系研究科
特任研究員
Webサイトひっぐすたん(higgstan.com)
立ち上げ
2003年
2007年


2007年
2011年

2012年

 

 

 

 

著者が執筆した素粒子物理学に関する本とデザインを行ったリーフレット

好きなことを仕事にして生きていきたい。誰しもが一度は考えることだと思います。かく言う私もそうでした。そして欲張りな私には好きなことが二つありました。博士号を取るくらいに素粒子物理学が好き。博士課程の空きを縫ってアルバイトをするくらいにデザインやイラストを作り上げることも好き。いろいろと考えた結果,私は素粒子物理学に関するデザインやイラストを作ることを仕事にしようと考えました。

東京大学理学系研究科物理学専攻で過ごした5年間。巨大な実験装置を扱う規模の大きい素粒子実験とは違う,素粒子物理学の未踏部分へ数人規模での実験でチャレンジするというコンセプトだった蓑輪研究室での生活は,非常に充実したものでした。正直,とても優秀とは言えない学生ではありましたが,アクシオンと呼ばれる素粒子に関する探索実験では素粒子の世界の最先端に痕跡を残せたと今でも自負しています。それと平行に行なっていたデザインの仕事,そして趣味のイラストの制作。大学院での生活の空きを縫って行なっていたこちらの活動も,とても充実したものでした。

博士号を取得した後の進路の決定に関して,「好きなものを仕事にしたい!やりたいものは全部やりたい!」という信念がすべてでした。素粒子物理学とデザイン・イラスト,その二つとも好きだった私は,理学部で広報を担当されていた横山広美准教授と一緒に研究活動も行いつつ,科学系のデザインに強かった会社のマブチデザインオフィスで仕事をさせていただくことになりました。当然そんなキャリアパスの前例なんてありません。ですが周囲の皆様の多大なご助力のもと,さらに元来の「生きていくだけならどうにでもなるだろう」という適当な性格が功を奏して(?)なんとなく両立することができました。

さらに並行して,素粒子物理学に関するイラストを配布するWebサイト「ひっぐすたん」を立ち上げました。素粒子物理学を説明するためのイラストは研究機関のサイトなどで公開されていましたが,とても少ない。そして味気ない。さらには可愛くない。そんな状況を打破すべく,誰にでも自由に使うことができ,そして可愛い,素粒子物理学に関する素材をひっぐすたんで配布しています。素粒子を可愛く描くだけでは飽き足らず,素粒子実験もキャラクター化して,その実験内容を4コママンガとして公開するようになりました。この可愛い素粒子と素粒子実験のキャラクターたちは素粒子物理学に関する2冊の本となって出版していただくことができ,今では関係のポスターやパンフレットに使ってもらえるまでに成長してくれました。

今でも手探りが続きどうやって生きていこうか考える,そんな先の見通せない毎日です。ですが最高に楽しい毎日です。「博士課程に進むと潰しが効かなくなる」なんてお話をたびたび耳にしますが,私は決してそうは思いません。修士課程,博士課程,博士号を取得した後,好き勝手に生きたとしてもなんとかなる,そんなキャリアパスの前例がここにあります。

 

 

理学から羽ばたけ>

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加