研究科長・学部長あいさつ

略歴
理学系研究科生物科学専攻教授。専門は植物生理学。1982年東京大学大学院理学系研究 科博士課程修了(理学博士)。1995年より現職。2006年日本 学術システム研究センター主任研究員,2011年日本学術会議 会員,2012年東京大学副学長,2012年紫綬褒章受章。

この度,五神真教授が総長へと転出した後をうけ,理学系研究科長・理学部長を務めることになりました。日本で最も伝統があり,数多の俊英を輩出してきた理学系研究科・理学部の運営に携わる機会をいただきましたことは,私にとって身に余る光栄です。微力ではありますが,教員,職員,研究員,学生の皆さんとともに,先達の築いた歴史を礎にして,科学研究の先鋒をめざす理学系研究科のさらなる発展に努めたいと思っています。

理学は,森羅万象を理解するための学問で,人類最高の文化の1つです。そこでは,自然の深淵な原理だけでなく,そこに到る人の営々たる歴史性をも垣間見ることができます。自然科学は, 19世紀以降大発展を遂げ,1987年創立の東京大学理学部もこの科学の発展の一翼を担ってきました。なかでも,2002年の小柴先生のノーベル賞受賞は記憶に新しいものです。その結果,今では私たちは,人類が誕生する遙か以前の宇宙・地球の歴史や生命の歴史,生命の基本的な設計図,物質や力の原理などを理解できるようになっています。しかしながら,まだ残された謎も多く,理学系研究科の研究者や学生は,これらを解くために,真摯に研究に励んでいるのだと思います。私は,この真摯な研究とそれを支える次世代の研究者の育成,これこそが理学系研究科の根本にあるべきものであり,これを全面的に支援したいと考えています。

一方で,2011年3月11日の東日本大震災への科学の対応力の乏しさやSTAP細胞問題にみられる科学における真摯さの欠如などにより,社会では科学に対する信頼が揺らいでいると感じています。私たち理学者は,絶え間ない努力の果てに自然の原理を知ることを無上の喜びとします。私はこの楽しさにもとづく真摯さを大切にしたいと考えています。このような楽しさを大切に考えるのであれば,捏造などの問題は起こるはずはないからです。同時に,私たちは社会に向けての鋭敏なアンテナを張っている必要があると感じています。このアンテナを通してキャッチした社会の問題について,私たちの専門的かつ深い知識や研究・教育の実践を積極的に役立てるべきだと思っています。この社会との積極的な連帯と真摯な科学の追究があって始めて,社会の科学に対する信頼を取り戻せるのではないかと思います。

2015(平成27)年度
理学系研究科執行体制
研究科長・評議員 福田 裕穂(生科)
副研究科長・評議員 星野 真弘(地惑)
副研究科長 山内  薫(化学)
山本  智(物理)
研究科長補佐 長谷川哲也(化学)
村尾 美緒(物理)
榎本 和生(生科)
井出  哲(地惑)
 
事務部長 瀧田 忠彦(事務部)

理学は世界を相手にする学問です。理学系研究科では,アタカマを始め世界各地に共同研究拠点があります。理学部サマースクールUTRI(The University of Tokyo Research Internship Program)では,海外の優秀な学部学生を受入れ,理学部学生国際派遣プログラム SVAP(Study and Visit Abroad Program)では,理学部学生を海外の大学に派遣し,グローバルサイエンスコースでは,外国人学生を受入れ授業を英語化するなど,学部教育の国際化を進めています。これからも,世界の理学研究のセンターであり続けるために,研究,教育の両面からの国際交流を推進します。

私は,世界の研究者と協力し,理学の研究と教育を実践するとともに,社会と連帯して,日本および世界の発展に貢献すべく努力を続けていきたいと考えています。理学系研究科構成員の皆様の協力を,どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 
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