繋がる先に

藤本 征史(天文学専攻 博士課程1年生)

道路がとても滑らかだ。

アムステルダムから南に1時間ほどの田舎町,ライデン。24時過ぎに到着した駅で,宿までの最終バスがすでに出発したことを知る。暗闇の中,とぼとぼと歩き出してほどなく気づいたことである。

思えばオランダとは自転車大国である。水路と調和したキレイな町並みの夜の散策を,軽やかにすべるスーツケースとともに,私は楽しみ出していた。悔やまれるのは旅行のときにはいつも持ち運ぶ,ペニーとよばれる小型のスケートボードを,今回は日本に忘れてきたことである。旅では慣れない土地でのラストワンマイルに泣くことが常である。そんなときペニーはとても便利であり,ペニーで感じる道路の肌触りは身体感覚の拡張であったりする。見知らぬ土地の開発や歴史に,足下に伸びた感覚を通して想いを馳せることは,しばしば私を新鮮な気持ちにさせてくれる。

昨年から知己になった研究者の友人たちとた研究者の友人たちと,船上の懇親会にて親会にて

 

ライデン大学ローレンツセンター(Lorentz Center,Universiteit Leiden)で開催された議論中心型研究会「Physical Characteristics of Normal Galaxies at z>2」が今回の渡航の主目的である。業界で名を馳せる研究者達によるレビュートークや最新の研究成果発表だけでなく,テーマを絞ったディスカッションタイム,小グループに別れてのディスカッションからグループ毎での発表,度重なるコーヒーブレイク。それらが月曜の朝から金曜の夕方までみっちりと並ぶ。また参加者は期間中,4~5人毎に立派なボード付きのオフィスが与えられ,主催者が手配するホテルは全員同じ。時間・場所問わず,気づけばそこらかしこで議論が起きていた。

修士2年の春,初めて海外の研究会に参加したときは地獄であった。日本人は私1人,知り合いはもちろんゼロ。懇親会時には,論文でよく見る著名な研究者を無理矢理捕まえるものの,会話も続かず当たり障りのない挨拶が1,2分ほどで済んでしまう。同じく暇そうに見える海外の学生を見つけては話しかけたりもしたが,そんな彼らの名前も今では思い出せない。精一杯であった。

共同研究者宅にて,ウィーンのワインとパンプキンスープ

そんな私も気づけば,「久しぶり」とハグで始まる知己の方から,「あなたのところの学生とこの前~」などと自然と会話が続く初対面の方,逆に「君の論文読んだよ」と声をかけてくれる方。繋がり出した研究者の輪の中に,しかと私は立てていた。やることを粛々とやり続ける。見えてくる景色も,少しずつ変わって来たのかもしれない。



金曜日の研究会終了後,夜にはストックホルムの地に立っていた。共同研究者との議論と,彼の研究所でのセミナートークが目的である。週末を挟むので,彼女と同棲するという彼の家にステイさせていただいた。ストックホルムから車で40分ほどの山の中。鶏が鳴くこじんまりながら可愛らしい内装の一軒家は,物価が高いと言われるスウェーデンで家賃はたったの6万円ほど。家からでも年に3回は見えると言うオーロラの写真はとても美しく,寒いながらも暖炉の柔らかな温かさに包まれる生活をしばし夢想した。

翌月曜日,セミナートークも無事に終わり,夕方には帰路についていた。今回の渡航を振り返った。道路も人も,滑らかな繋がりを見せていた。繋がる先は何だろう。わからないからまた,勇気を出して歩を進めるだけである。

 
2014年 東京大学理学部天文学科 卒業
2016年 東京大学大学院理学系研究科
天文学専攻修士課程 修了
2016 年~ 同博士課程在籍
2016 年~ 日本学術振興会特別研究員(DC1)

 

 


遠方見聞録>

 

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