「ヒッグス粒子の謎」

浅井 祥仁(物理学専攻 教授)


浅井祥仁 著
「ヒッグス粒子の謎」
祥伝社新書(2012 年9 月出版)
SBN 978-4-396-11290-5

もう3年前になるが「ヒッグス粒子」が発見された。離れた分野の方や,当時高校生だった皆さんは,たかが新粒子の発見でここまで盛り上がり,ノーベル賞までさっさと出る過熱に違和感を感じたかもしれない。実は,ヒッグス粒子はこれまでの素粒子と全く違う性質の素粒子である。空気の窒素や酸素分子などを全部除いた「真空」は,空っぽなのではなくてヒッグス粒子が詰まった場に満たされていることが分かったのである。こんな変な状態に我々が住んでいて,この状態が変化していくことで今の宇宙に進化してきた。

大学院の素粒子物理学の講義では数式を使ってこのヒッグス粒子を学ぶが,本書は,実験する立場からヒッグス粒子を考えている。どんな実験装置を作って探したか,ヒッグス粒子にどんな意味があるのかを述べている。円周27kmの巨大な実験装置は最新の科学技術が結集されていて,日本の技術や研究者の奮闘ぶりが伝われば幸いである。

終わった研究には興味がないと言う前向きの皆さんには,4章はこれからの素粒子物理学が進むであろうと思う方向をまとめた。どんな方向に進んでいくかは相手が自然なので分からないが,素粒子を取り囲む,時間や空間,満ちている真空の関係をどのよう紐解き,宇宙誕生の瞬間にたどり着く夢物語を述べている。

新書にしてはベストセラーだったようであるが,印税はそのまま福島と宮城の復興に寄付しているのでどのくらい売れたかは把握してない。科学立国の礎は元気な日本から。

 

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