原始星を取り巻く大型有機分子のリングを発見

大屋 瑶子(物理学専攻 博士課程2年生)

山本 智(物理学専攻 教授)

 

 


太陽程度の質量をもつ恒星(低質量星) は,星間ガスが自己重力で収縮してできる。この過程で,原始星の周りには回転するガスの円盤(原始星円盤) が作られ,それを母体として惑星系ができると考えられている。その形成過程は,大きく分けて2つの方法で調べられてきた。1つは,太陽系内の惑星や隕石を直接調べる考古学的な方法である。そしてもう1つは,別の若い恒星を調べることで太陽系の昔の姿を間接的に類推する方法である。 後者のアプローチでは,長年,宇宙の遠く離れたところ(約1016km)にある恒星について,惑星系程度の大きさ(100天文単位※注)のものを解像することは非常に困難であった。しかし近年,チリに設置された大型電波干渉計(アルマ望遠鏡)の活躍により,原始星円盤が作られつつある様子が詳しく調べられるようになってきた。さらに,アルマ望遠鏡では様々な分子の分布を捉えられるという点で,原始星形成に伴う物質進化にも切り込むことができる。私達は,アルマ望遠鏡を使った高解像度観測により,原始星を取り巻くガスの物理的・化学的構造を調べた。


原始星を取り巻くガスの構造。原始星を中心に,扁平な原始星円とエンベロープガスが回転している。原始星円盤とエンベロープガスの境目に,飽和有機分子のガスがリング状に分布している

観測した天体は,へびつかい座にある低質量原始星IRAS 16293-2422Aである。電波望遠鏡による観測では,分子の回転スペクトル輝線を見ることで,ガスの化学組成がわかるばかりでなく,ガスの運動も詳細に知ることができる。それは,ガスの運動によって,スペクトル線の周波数がドップラー効果を受けるためである。観測の結果,この原始星を取り巻くガスの構造は,回転する原始星円盤(半径50天文単位)と,その外側から落ち込んでくるエンベロープガスから成ることがわかった(図)。さらに,原始星から半径50天文単位の位置にメタノールやギ酸メチルといった 飽和有機分子が集中的に分布している様子が捉えられた。この位置は,ちょうど原始星円盤とエンベロープガスの境界面にあたる。星間塵を含むガスが原始星円盤の端に落下・衝突する際に,星間塵に付着していた有機分子が蒸発したものとみられる。これまでこの天体は飽和有機分子を豊富に含むことが知られていたが,その分布と起源は不明であった。本研究は,星間空間で作られた有機分子が確かに原始星円盤までもたらされていることを,観測的に初めて明らかにした点で大きな注目を集めている。この成果は, 惑星系の物質的な起源,ひいては生命を育むに至った地球環境の起源に迫る上で,重要な鍵になるであろう。

本研究は, Y. Oya et al. ,Astrophysical Journal 824,88(2016)に掲載された。

(2016年6月20日プレスリリース)

※注:1 天文単位は地球と太陽の間の平均距離 (1.5× 108km)を表す。



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