クライオ電子顕微鏡シンポジウム@中国

福田 昌弘(生物科学専攻 博士課程2年生)

2016年6月27日から30日まで,中国北京,万里の長城のほど近くにて開かれたクライオ電子顕微鏡による三次元イメージングシンポジウム2016(2016 Kuo Symposium on 3D Cryo-EM Molecular Imaging)に参加した。これはクライオ電子顕微鏡を用いたタンパク質の立体構造解析に関する国際学会で,この分野を牽引する多くの研究者が世界中から参加していた。クライオ電子顕微鏡とは,対象の試料(タンパク質など)の三次元構造を原子レベルで観察できる手法の1つである。具体的には,薄い氷の中に閉じ込めた試料に電子線を当てて得られる画像を解析する。固定や結晶化を行う必要がないため,より生理的状態に近い形で生体試料を観察できると考えられている。近年この分野で,ソフト・ハードの両面で大きな技術革新があり,つい数年前には不可能と思われていた巨大な分子や複合体の構造が次々に明らかにされ,毎週のように一流紙の紙面を賑わわせている。私もこのクライオ電子顕微鏡による構造解析にチャレンジしてみたいとの思いから,意気揚々と中国へと飛び立った。

中国清華大学の友人と清華大学医学研究センターにて。右から2番目が筆者

 

…と思いきや,いきなり様々なハプニングに見舞われた。まず,飛行機が飛んでくれない。最初は30分の遅延とのことだったが, 30分後にはさらに30分の遅延となり,仕方なく搭乗ロビーで待っていると,あれよあれよという間に遅延時間が増えていった。若干の不安を覚えたため,昨年学会で知り合って,今回現地で待ち合わせをしていた清華大学の中国人の友人に遅延の件を伝えると,「いつものことだよ。まったく驚くことじゃない」とのこと。なんだ,そういうものかと納得して,結局予定より3時間ほど遅れて中国に降り立ったが,そこで致命的なミスに気付いた ―すなわち,自分の携帯電話はどうやら海外で使用できないようだ,ということに。これでは友人に連絡もできない。さらに,空港のスタッフには日本語はもちろん,英語もなかなか通じない。その上,僕は筋金入りの方向音痴だ。半分絶望しかけたが,なんとか北京空港のフリーWi-Fi の使用方法を聞き出し,さらに,極めて不安定な,空港のWi-Fi がつながりやすいスポットを歩き回って探し出し結果,奇跡的に友人と会うことができた。友人と会って挨拶を交わしたときの安心感は忘れることができない。その後,その友人たちに北京の街を案内してもらったのは本当に良い思い出になった。このようつながりは大切にしていきたい。

中国清華大学の友人と清華大学医学研究センターにて。右から2番目が筆者

さて,紙面の都合で詳細は省かざるを得ないが,他にもさらにいくつかのハプニングを乗り越えてついに辿り着いた学会の発表は,どれも非常にエキサイティングな内容で,想像力と実験意欲を掻き立てられた。特に,電子顕微鏡業界の大御所であるヨアヒム・フランク(Joachim Frank)先生やリチャード・ヘ ンダーソン(Richard Henderson)先生,そしてTRP channel(様々な刺激に対するセンサーとして機能する膜タンパク質)の原子分解能構造の研究で有名なイーファン・チェン(Yifan Cheng)先生などに直接会い,お話を聞けたことは非常に有意義であった。また,中国の学生たちと話す機会も多く得られ,お互いの研究内容はもちろん,日々の生活などに関しても様々な興味深い話を聞けた。印象的だったのは,中国の学生たちのハングリーさとひたむきさだ。勉強熱心で,失敗を恐れずに質問し,これと決めたら周りの目を気にせずに一途に突き進むその姿勢には,学ぶべきところは多いと感じた。一方で,共感することも多々あった。清華大学の学生は基本的に大学敷地内の寮住まいだそうだが,夜日付が変わっても実験をしていることはよくあるという。また,実験器具や試薬も僕らと同様なものを使用していたり,僕らと同じように私生活でも節約に気を配っていたりと,国や文化などは違っても根本的には同じなのだということを感じた。月並みな言い方だが,お互いのよいところをリスペクトして,ともに高め合い,世界をリードする研究ができたらいいなと思った。

 
2012年 東京大学理学部生物化学科 卒業
同年 東京大学大学院理学系研究科
生物化学専攻 入学
現在に至る

 

 


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