115 億光年かなたの宇宙で見つかった怪物銀河の大集団

梅畑 豪紀(天文学教育研究センター/
               ヨーロッパ南天天文台 日本学術振興会 特別研究員
)

田村 陽一(天文学教育研究センター 助教)

河野 孝太郎(天文学教育研究センター 教授)

 

 



波長1mm 付近の電磁波をサブミリ波と呼ぶ。サブミリ波で宇宙を観測すると何が見えてくるのか。その主役の一つに遠方の宇宙に存在する活発な銀河が挙げられる。ここで「活発」という言葉の意味は,いかに激しく星を生み出しているか,である。例えば私たちの住む銀河系も星を生み出し続けているが,その数百倍から数千倍もの勢いで爆発的に星を作っている銀河をサブミリ波では捉えることができる。これは具体的には,作られた星からの光で暖められた周囲の塵からの放射を捉えている。その活動の激しさゆえに,しばしばこのような銀河は怪物銀河(モンスター銀河)と呼ばれている。

1997年の最初の発見報告からまだ20年に満たないことが示すように,怪物銀河は比較的新しい研究対象だといえる。私たちは,これまでに南米チリに設置されたアステ望遠鏡にアズテックカメラを取り付け,数多くの怪物銀河を発見してきた。しかし,より詳しくこの興味深い銀河を知るためにはより高感度,高解像度の観測が求められるようになる。そこで登場したのがアルマ望遠鏡である。アルマ望遠鏡は,日米欧の国際協力プロジェクトである最新鋭の電波望遠鏡で,アステ望遠鏡と同様にチリのアタカマ高地に設置されている。アルマ望遠鏡の登場によって,従来の何倍,何十倍の感度,解像度を容易に達成することが可能となった(図)。

 


怪物銀河の例。当初一つの天体として発見されたが,アルマ望遠鏡によって3 個の怪物銀河からなることがわかった。すばる望遠鏡の可視光の画像では暗く,サブミリ波による探査が欠かせないことがわかる。


私たちは2014年から2015年にかけて,このアルマ望遠鏡を用いて怪物銀河の観測を行った。この観測には二つの大きな特徴がある。一つ目は視野の広さである。アルマ望遠鏡の弱点として,一度に観測できる範囲(視野) が狭いというものがあるが,私たちは連続した103個の視野をつなぎ合わせ, 6平方分角という非常に広い範囲を観測した。これは数多のアルマ観測の中でも最大級の広さである。二つ目は観測した場所である。近傍の宇宙では「グレートウォール」と呼ばれる,銀河分布の織りなす数億光年規模の巨大な構造が知られている。私たちは115億光年先の遠方宇宙に見つかっている若い銀河の大集団,いわば「原始」グレートウォールを狙った。

今回,アルマ望遠鏡によって一つ一つの怪物銀河をはっきりと捉え,また,すばる望遠鏡など他の望遠鏡の助けも得て怪物銀河までの距離の決定も進めることができた。その結果は非常に刺激的なものだった。実に9個の怪物銀河が原始グレートウォールのまさに中心部に密集していたのである。怪物銀河がどんな場所で生み出されたのか,これは大きな謎となっていた。この結果は怪物銀河が巨大な構造の内部で集中的に形成されていることを示す有力な観測的証左といえる。

怪物銀河は128億光年先まで見つかってきている。今後アルマ望遠鏡をはじめとする最先端の望遠鏡によって,さらに時代をさかのぼって「怪物銀河がどこで,どのように生まれたのか」が明らかにされていくことだろう。

本研究は, H. Umehata et al. ,The Astrophysical Journal Letters. 5, 14589 (2015) に掲載された。

(2015年12月5日プレスリリース)



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