113番元素の発見に寄せて

下浦 享(原子核科学研究センター長/物理学専攻 教授)

森田浩介教授(九州大学,理化学研究所仁科加速器研究センター)の率いるる研究チームにより発見された113番元素について, 2016年6月8日に国際純正・応用化学連合(IUPAC: International Union of Pure and Applied Chemistry)から「ニホニウム(Nihonium,元素記号Nh)」という案が発表されました。日本が発見した元素が初めて周期表に載るという画期的な快挙です。


荷電状態倍率器(CSM)。RILACビームラインに6台あるCSMのうち,4台が東大の備品。

113番元素の生成には,亜鉛(原子番号30)原子核のビームをビスマス(原子番号83)原子核に入射し,衝突・融合させる手法がとられました。この手法を用いる場合,ビームの最適化が重要となり,理想的な衝突エネルギーの実現のためには,加速器の増強が必要不可欠でした。そこで,原子核科学研究センターが東京大学田無キャンパスから和光(理研敷地内)へ移転することを機に,「荷電状態倍率器(CSM=写真)」をエネルギー増幅装置として導入し経常的に利用するという,東大と理研との共同研究がスタートしました。その結果,加速エネルギーは核子あたり 5.03メガ電子ボルトに倍増され,のべ553日間のビーム照射により3つの113番元素イベントが生まれたのです。

森田チームは,周到な準備とイベントを待ち続ける辛抱強さで,足掛け9年の実験を成功に導きました。一方, 15年以上にわたる,東大と理研との共同研究がその成功の一端を担っていたこともまた喜ばしいことです。

 

トピックス>

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加