レイナーキャナム 無機化学

西原 寛(化学専攻 教授)


G. Rayner-Canham,T. Overton著
(西原 寛,高木 繁,森山 広思 訳)
「レイナーキャナム 無機化学」
東京化学同人 (2009年3月出版)
ISBN 978-4-807-90684-0

東大で無機化学の講義を担当して20年になる。百種を超える元素の化学に関する無機化学を教えるには,詳しい情報が万遍なく詰め込まれている教科書が必要になる。私の学生時代からコットン・ウィルキンソンやシュライバーなど,幾多の名著が教科書として広く使用されてきたが,総じて原著は分厚く,和訳本は上下2巻になる。必要な情報を網羅しつつコンパクトな教科書を探していたところ,「レイナーキャナム 無機化学」に出会い,翻訳をした。和訳本は紙面一杯に情報を詰め込んで,手軽に持ち運べる一冊本にした。

本書には他の無機化学の教科書にない面白さがある。第9章の「周期性」が独特であり,そこを中心に本全体にわたって,元素間の類似性と差異が丁寧に解説されている。そして各元素の特長が,様々な物質の構造や特性にいかに反映され,各物質が我々にどのように役立つのかを理解させてくれる。さらに適所に配置されたコラムは,頭をリフレッシュさせるとともに,身近な話題で化学の魅力を教えてくれる。全体を一読すると「科学の知識欲」を満足させる爽快感がある。

理学部化学科では,2015年度から3年生の講義をすべて英語にした。したがって,教科書も原著を指定しているが,日本語で読みたい人には本和訳書も薦めている。脚注に重要な用語の英語を示し,「訳注」で欧米と日本の違いからくる分かりにくいところを解説しているのが,特に工夫したところである。

 

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