2016年度文部科学大臣表彰
科学技術賞・若手科学者賞を3名が受賞

広報誌編集委員会

2016年度科学技術分野の文部科学大臣表彰が発表されました。理学系研究科からは,塩谷教授が科学技術賞(研究部門)を,林准教授と関根准教授が若手科学者賞を受賞しました。この表彰は,科学技術に関する研究開発,理解増進等において顕著な成果を収めた方に与えられるものです。

塩谷 光彦 教授
林 将光 准教授
関根 康人 准教授

塩谷光彦教授(化学専攻)は,業績「生体情報分子を用いた精密金属配列化に関する研究」による受賞です。金属錯体の集合体は,多電子が関わる高次の反応や物性を発現する高いポテンシャルをもっています。しかしながら金属錯体の集積・配列化法は,無限構造や特定構造に限られていました。塩谷教授は,「数」「種類」「順序」の情報を有する生体高分子の構造特性に着目し,人工生体高分子を鋳型配位子とする金属イオンの集積法を確立しました。金属配位子を導入したDNAやペプチド等の人工生体高分子を設計・合成し,金属イオンとの自己組織化により,同種・異種の金属を「数」「種類」「順序」を制御して配列化することに成功しました。この成果は,周期表の8割を占める金属元素の自在配列化に関する学理と技術を発展させ,金属配列に特異な物性や反応性を基盤とする物質科学に大きく寄与するものです。生体情報分子を鋳型とする金属錯体の配列化法は,国内外の多くの研究グループによりナノテクノロジーやバイオテクノロジー分野にも展開されつつあり,世界的にも高い評価を得ています。

林将光准教授(物理学専攻)は,業績「電流駆動磁化制御と薄膜へテロ構造のスピン軌道効果の研究」による受賞です。磁化の向きを情報の記憶ビットとして用いるスピントロニクス素子は,高性能の不揮発性メモリや不揮発性論理演算素子へ応用できるとして期待が高まっています。林准教授は,大容量メモリの根幹を成すシフトレジスタの基本動作を強磁性ナノ細線を用いて実証し,実用化に向けた重要な一歩を示すとともに,磁性体ナノ構造における磁化のダイナミクスに関する現象の物理解明に寄与しました。また,林准教授は薄膜へテロ構造におけるスピン-軌道相互作用に起因した物理現象に関する研究を推進し,磁化に作用するトルクの量評価手法を確立するなど,スピントロニクスの新たな展開を切り開きました。これらの研究成果は,今後の情報化社会において重要な役割を果たすスピントロニクス素子の開発に大きく寄与するものと期待されています。

関根康人准教授(地球惑星科学専攻)は,業績「惑星や衛星の大気と海洋および生命の起源と進化に関する研究」による受賞です。関根准教授は,地球を始めとする惑星・衛星の起源や進化,特に,大気や海洋を構成する揮発性分子の化学進化や物質循環の理解を通じて,生命を育む惑星が形成・維持される根本原因を明らかにすることを目指して研究を行ってきました。関根准教授の業績は多岐にわたりますが,特筆すべきは以下の3つです。まず,土星の衛星エンセラダスの内部海の物理化学状態を室内実験と探査データに基づき明らかにし,地球生命誕生の場としても有力な熱水環境が,地球外に現存することを初めて実証したこと。また,同じ土星衛星タイタンの厚い窒素大気の起源について,約40億年前に起きた隕石重爆撃説を提案し,大気形成論に新シナリオを提示したこと。さらに,約23億年の地球に起きた大気酸素濃度の急上昇のメカニズムを地質データに基づいても明らかにしたこと。これらの研究成果は多数の論文として発表されていますが,最近5年間にNatureおよび姉妹誌に発表した論文だけでも4編を数え,国際的な注目度の高さが窺えます。

※この文章は,西原寛教授(化学専攻,塩谷教授記事),藤森淳教授(物理学専攻,林准教授記事),杉田精司教授(地球惑星科学専攻,関根准教授記事)がそれぞれ執筆されたお祝い原稿を編集委員会で再編集したものです。

 

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