ヒョウモントカゲモドキ

朴 民根(生物科学専攻)

爬虫類は熱帯から寒冷帯、沼地から砂漠にわたる様々な環境に生息し、陸上脊椎動物の中で最も繁栄してきた動物群でもある。また、これら爬虫類は鳥類・哺乳類と共に有羊膜類の動物でありながら、魚類・両生類と同じ外温動物でもあり、脊椎動物の進化と環境への適応を研究する上で極めて重要な位置に属している動物群であるといえる。このようなことは爬虫類の生殖戦略にもよく反映され、極めて多様な生殖現象をみることができる。例えば、多くの動物の性は遺伝子によって決定されるが、ヘビ亜目を除いて爬虫類には温度に依存した性決定を行う種が多く含まれている。すなわち、ワニ目の全種、カメ目の大部分、そしてトカゲ亜目の一部分がこのような性決定を行う動物である。もう一つの例としては胎生化を挙げることができる。脊椎動物での胎生化は、一説によると、95回以上にわたって、いろいろなグループで並行して起こったといわれている。トカゲ亜目とヘビ亜目を含む有鱗目の約20%が胎生種であり、ほとんどの胎生化はこの有鱗目で起こっている。そして、Mabuya属には発生に必要なほとんどの栄養の供給を卵黄ではなく、胎盤に依存している種もいる。

私は爬虫類の中でも最も多様な環境に適応し、生殖現象の多様性が顕著な有鱗目から、実験環境下で飼育・管理が可能な動物種としてヒョウモントカゲモドキを選び、有鱗目で見られる多様な生殖現象を支える分子機構の研究の第一歩にすることにした。

ヒョウモントカゲモドキ(学名:Eublepharis macularius、英名: leopard gecko)はトカゲ亜目のトカゲモドキ科に属する。その生息地はインド北西部からイラン東部で、多くの地域個体群が存在する。全長約20cm・体重約60gの大きさで、生後約1年で繁殖可能になり、繁殖期に卵を2個ずつ2-4週おきに4-10回産卵する。また、このトカゲは夜行性なので、日光浴を必要とせずUV照射、バスキングなど煩雑な飼育設備を必要としない。メスは集団飼育も可能で、狭い飼育室での管理も可能である。しかし、餌はコオロギやミルワームなど生きている昆虫で、その飼育も必要になる。非常におとなしい性質で、人間に対しても臆さない性格であり、欧米ではペットとしての人気も高く、その飼育も盛んに行われている。

私はヒョウモントカゲモドキの生殖生物学的特徴と、それを支えている生体内情報伝達機構を解明するために、関連するホルモンとその受容体の分子同定を行うと同時に、生体内での発現変動を調べている。

ヒョウモントカゲモドキが温度依存性性決定動物であることは1980年E. Wagnerにより報告され、現在テキサス大学のD.Crewsグループが性決定時の温度による性行動や成長後の内分泌機能の変化などの研究を行っている。しかし、ヒョウモントカゲモドキの生殖生物学的特性を初め、多くの基礎的な生物学的性質もいまだに詳しく解明されていない。