おサル

石田 貴文(生物科学専攻)

「エー」、「ソノー」、「ウーン」・・・答えに窮して頭に手をやったりしたことはありませんか?気まずい状況、面接の時、想いを告白するとき・・・髪の毛をいじったり、鼻をこすったり、身体がムズムズして掻いたりしたことがあるでしょう。一口で言ったらストレスを感じるとこのような動作が出ます。それでは写真を見て下さい。一番上の人はさておき、2頭のニホンザルに登場してもらいます。ニホンザルは旧世界ザルのマカクというグループに属し、ヒトから見るとチンパンジーと言った類人猿よりも1まわり離れた霊長類の仲間です。さて、2頭のサルが出会った後、ちょっとした諍いがありました(これはストレスです)。サル達は互いに距離をとります。そして、ボリボリと身体を掻くことをします。このような動作は、諍いのあと頻繁に、そして徐々に間隔が開きやがて消えます。落ち着いた(あるいは落ち着きたい)サルは他のサルの毛づくろい(これはコミュニケーションの1種です)を始めました。私たちも同じ様なことを日常生活でやっていることに思い当たりませんか?

このように、我々ヒトのミラーサイトとして類人猿やサルは、人類とその進化を理解する上で欠かすことのできない生き物です。ヒトの比較研究にはチンパンジーはもちろんですが、マカクにも利点があります。1つは、ヒトに遠からず近からずということで差を見ることができます。また、マカクは多くの種に分化し、広い地理的分布・生態学的地位を占め、環境適応や遺伝的多様性の比較研究に優れています。そして、ヒトのモデル生物としてゲノム研究、行動観察、社会研究だけでなく、色々な実験研究にも用いられます。ヒトは遺伝的には多様性の少ない生物ですが、色々なヒトがいます。多様性を背景とした非純系の生物学の担い手としてもマカクは重要です。

極端な擬人化やヒト中心の解釈は危険ですが、私たちの隣人(隣猿?)は沢山のことを教えてくれます。みなさんもストレスがかかったかなと思ったら、動物園に行って隣人に会ってきてはどうでしょう。