カワゴロモ

加藤雅啓(生物科学専攻)

葉状の根の上に花が多数できたカワゴロモの1種

世界の熱帯・亜熱帯に分布するカワゴケソウ(川苔草)科の植物は川の中の岩上に生える変わった水生植物で、特に滝や早瀬を好む。水位が高い雨期は流水中で生育するが、乾期で水位が下がると岩ごと空中に露出して花を咲かせ実を結ぶ。そのかわり,植物自身は枯死してしまう。日本にも8種が分布し,カワゴロモはその1つである。この植物は「川衣」の名が示す通り石の表面を覆う衣のようで、苔(ゼニゴケ)とか藻(アオサ)に良く似た、不定形,扁平で葉緑体をもつ。しかし,カワゴロモは花を咲かせるのでサクラと同じ被子(顕花)植物である。この緑色の衣は根が変形したものと理解されているので、根の上に花ができる。さらに,退化した葉はあるが、茎に相当する軸状の器官はない。葉も根の内部からつくられる。被子植物は根・茎・葉・花で形作られ、葉と花は茎の上にできるというありふれた姿と比べると、カワゴロモの体つきはかけ離れている。他のカワゴケソウ科もこれほどではないにしろ、奇妙な形態をしている。

なぜカワゴケソウ科が進化したのか?カワゴケソウ科が住む環境は独特で普通の植物が住める環境ではない。カワゴケソウ科は器官の配置を変えるばかりでなくそれぞれの器官を特殊化することによって、特異な環境に適応できたと思われる。分子系統解析から、カワゴケソウ科は普通の陸上植物であるオトギリソウ科から進化したと考えられている。

どのようにして独特の形がつくられるのか?実生の発生を観察すると、成植物のからだの出発点である幼芽と幼根は形成されず、胚軸から生じた不定根からカワゴロモのからだがつくられ、やがてその上に葉や花がつくられる。