原理・原則を学習し,現象を理解する

坪井 俊 (数理科学研究科 教授),山本 昌宏 (数理科学研究科 教授)

図1

左: 数学科の講義演習は駒場キャンパスの数理科学研究科棟で行われる
右上: 数学の研究集会が行われる玉原国際セミナーハウス
右下: コモンルームはコーヒータイムにはさまざまな議論が行われるとともに思索をする場でもある

図2

数学科のカリキュラム

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数学というと,丸暗記した定理や公式を使って計算して問題の答えを出す機械的な作業だ,という風に思われているかもしれないが,それはあやまりである。数学の本質は,定理や公式の「意味」を考え,その背後に潜む「原理」や「真理」を理解し,さらには現実の多様な課題に数理的な解答を与えることである,数学科では,まず基本的な論理や推論形式を学ぶことが求められるが,実は数学の醍醐味は,常識を覆すような斬新な発想がひらめけば,それまで想像もできなかった新理論が生まれ,いまだかつて誰にも答えられなかった問題が解決されることである。数学は創造性に富み,驚きや感動にみちた営みであり,日々発展を続けている。また技術が進歩し社会が複雑化するにつれ,現実からの課題の本質を深く洞察し数理的な解決がますます求められるようになってきている。数学は自然界の摂理を解明する強力な道具としての役割を古代から果たしてきたし,今後もそのような役割を担っていくであろう。数学科に進学すると,19,20世紀を通じて著しく発展した現代数学の基礎を学ぶ。数理科学研究科大学院などに進学すると,進んだ勉強をし,研究者への道を歩むこともできる。一般社会においても数学の勉強を通じて身に着けた正確な論理性やものごとを深く追求する姿勢は,さまざまな仕事をする上で大きな助けになる。数学科では数理ファイナンスや暗号理論,コンピュータネットワークや数値計算,アルゴリズム開発などコンピュータに関わる数理など,実社会で脚光を浴びている高度な数学理論を学ぶこともできる。

以下におもな科目を紹介する。数学科においては多くの科目に実験に代わるものとして演習の時間が設けられている。これは抽象的な形で書き表された定理の意味を自分で考え,さまざまな場合に適用していく経験を積むことにより深い理解を可能とするものできわめて重要である。

第4学期(2年生の冬学期)

「代数と幾何」では線型代数学のより進んだ理論を学ぶ。「集合と位相」では,集合論と位相空間論の基礎的な諸概念と基礎的な諸結果を,「複素解析学 I 」では,一変数複素関数論の入門的な部分を学ぶ。これらの4学期の講義の内容は,3年生以降の講義・演習・セミナーについていくために不可欠である。

第5学期(3年生の夏学期)

各週,以下の講義がある。「代数学I」:群論と環論の入門,「幾何学I」:多様体論の入門,「解析学IV」:ルベーグ測度と積分,「複素解析学II」:第4学期の「I」に引き続きより進んだ内容を扱う。これらのそれぞれに「特別演習」がついている。

第6学期(3年生の冬学期)

前学期までの必修講義を受けて,多様な数学を学ぶために以下のような選択必修科目が準備されており,いくつかには演習がついている。「代数学II」:環と加群,つまり基礎的な環論。主イデアル環上の有限生成加群など,「代数学III」:ガロア理論とそれに関連する主題,「幾何学II」:位相幾何学の初歩,「幾何学III」:ベクトル場と微分形式,「解析学V」:微分方程式論の初歩,「解析学VI」:フーリエ変換および超関数,「現象数理I」:数理解析学の概論,「確率統計学I」:確率論の基礎,「計算数学II」:計算情報環境の構築に関するより進んだ演習。さらに「数学輪講」として,教員推薦のテキストから選択して行う自主ゼミがある。

第7学期(4年生の夏学期)

選択必修科目のほかに,「数学講究XA」とよばれる指導教員のもとでの小人数のセミナーがある。これは数学科において長い伝統をもつ独特の科目であり論文や専門書を腰を据えてじっくり読みことにより,各学生の数学のバックボーンを構築することを目指す。さらに現在進行中の現代数学を概括する「数学講究XB」もある。

第8学期(4年生の冬学期)

7学期の数学講究XAに続いて「数学特別講究」があり指導教員のもとで個別指導を受ける。数学科必修科目の紹介は http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/gakubu/cur.html にある。

理学部アクチュアリー・統計プログラム

これは未来のアクチュアリーを養成していくと同時に,数理統計学の基礎を体系的に学んだ統計家を養成することを目的としている。現在のアクチュアリーに必要な基本的な知識の修得のみならず,将来的に必要となるであろう,ファイナンス・リスク管理およびその統計的取り扱いも視野に入れ,確率論・統計学を包括的に教育し,保険数理の発展に寄与する人材を育成する。

東京大学大学院数理科学研究科への進学

修士課程の入学試験は9月1日を含む週に行われる。理学部数学科の定員45名に対し,修士課程では留学生6名を含めて53名を募集する。半数を超える学生が大学院へ進学している。いっぽう,数学科卒業生の採用を希望する官庁・企業も多く,統計・年金関連,コンピュータ関連,金融関連など多方面にわたる。最近,数学を必要とする業種がさらに多様化しつつあり,コンサルタント会社,暗号開発関連会社などへの就職も見られる。

特色ある施設

図書室は15万冊の数学関係の図書雑誌を有し,世界屈指の規模を誇る。さらに群馬県沼田市玉原高原に玉原国際セミナーハウスを有し,合宿形式のセミナー,研究集会,オリエンテーションなどに用いられている。

理学部数学科ウェブページ
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/gakubu/