宇宙の起源,惑星の起源,そして生命の起源へ

林 正彦(天文学専攻 教授),嶋作 一大(天文学専攻 准教授)

図1

研究室での実習風景と,木曽観測所のシュミット望遠鏡

図2

天文学科カリキュラム

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天文学は,星や銀河・銀河系をはじめとする宇宙を構成する諸天体の研究,そして知的探求の究極的対象である宇宙の仕組みを解明しようという学問である。満天の星空に魅せられて,天文学に興味を抱かれた方も多いことであろう。現代の天文学では,可視光のみならず,電波,赤外線,紫外線,X線,γ線など,電磁波のほぼすべての波長による地上およびスペースからの天体や宇宙の観測を行い,さらには,ニュートリノなどの粒子線による観測や,重力波の検出も試みられるまでになっている。これらの観測手段の発達,計算機の性能の飛躍的向上と,それらに並行した理論研究の進歩によって,天文学は目覚ましく発展している。可視光のみによる観測では静的にとらえられていた宇宙も,さまざまな電磁波などで総合的に見ると,誕生から死に至るまでのすべての時期における星の活動,巨大なブラックホールが活動する銀河中心核,銀河や大規模構造の形成など,多様な活動現象を含むダイナミックなものであることが分かってきた。遠方の銀河や宇宙背景放射の観測からは,誕生初期の宇宙の姿が明らかになりつつあり,また未知のダークエネルギーの存在も判明した。太陽系外惑星の観測では,地球のような惑星を検出して,そこに生命が存在する証拠を発見しようとする試みがなされている。天文学は,観測手段の大型化や国際化などによりビッグサイエンスの一面ももちつつも,当然ながらも各研究者の独自の思考が重要な科学でもある。天文学科においては,このような現代天文学を主体的に学び研究する人材を育てることを目標としている。

天文学の方法の基礎をなすものは,主として,数学および理論と実験を含んだ物理学なので,天文学科が開講する天文学の幅広い分野の講義のほかに,物理学科の開講する専門科目の履修も求めている。その上で,天文学科および天文学教育研究センターでの実験や観測実習などを通じて,基礎的な知識と技術を習得するとともに,先端的な観測装置を使う機会や,研究の現場を体験できるように,また学科の小規模性を生かして教員と学生の一対一の討論指導が可能になるように配慮し,向学心・探究心に溢れた学生の皆さんの要望に応えたカリキュラムを用意している。

進学振り分け

天文学科は上限定数9名で学生を募集している。その内訳は,第一段階において理科I類5名と全科類1名,第二段階において全科類3名である。

学年ごとのカリキュラム概要

(駒場4学期)

進学が内定すると,天文学を学ぶための基礎固めとして,物理学と物理数学の授業を受ける。並行して,天文学科が独自に開講する演習で理解を定着させる。天文学を概観する講義も開講されている(選択科目)。

(3年生)

引き続き,量子力学や統計力学をはじめとした基礎的な物理学を学ぶが,天文学科の専門科目もたくさん登場し,天文学科に入学したことを実感する。天文学科の専門科目には,講義形式の授業に加えて,演習,実験,観測実習も用意されている。中でも観測実習(科目名は基礎天文学観測)は,日本各地の観測所で観測体験ができるため,学生の人気が高い。

(4年生)

3年生に比べて時間割に空欄が多くなる。とはいえヒマになるわけではなく,卒業研究(科目名は天文学課題研究I,II)が始まるのである。1年をかけて1つの研究を継続し完成させることで,研究の楽しさ(や苦しさ?)を味わえるとともに,研究に必要な自主性や思考力(や忍耐力?)が身につく。

特色あるカリキュラム

基礎天文学観測

少人数のグループに分かれて,教員の引率や指導のもと,実験や観測を行なうというものである。その内容は多岐にわたるが,中でも,木曽観測所や国立天文台の野辺山宇宙電波観測所・岡山天体物理観測所などに泊まり込んで,プロが使う望遠鏡を自ら操って天体観測するコースは,学生に強い印象を与えるようである。この科目は,教員と親しくなるよい機会でもある。

天文学ゼミナール

天文学の研究やその成果の発信には英語が不可欠である。3年生を対象としたこの科目では,英語の教科書の輪講や英語での研究発表を通じて,天文学の知識と実戦的な英語力を同時に身につけることができる。

天文学課題研究I,II

いわゆる卒業研究である。4年生は年初に教員を1人選び,1年かけて1つの課題を研究する。マンツーマンを超えて,1人の学生を複数の教員が指導することもある。研究内容は,学会発表や専門誌への掲載ができるほど高度なものもあり,年度末に行なわれる発表会はたいへん盛り上がる。

大学院への進学

天文学科卒業生の多くが大学院に進学している。天文学の広い研究分野をカバーするために,天文学専攻の大学院教員は専任教員に加え,数名の物理学専攻,大学院総合文化研究科広域科学専攻,宇宙線研究所の教員,さらに自然科学研究機構国立天文台,宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所を本務とする教員35名で構成されている。そのカバーする研究分野の広さは,世界的に見ても特筆に値するものといえ,その特徴を生かした,幅広く天文学分野を見渡せる人材の育成を目指している。大学院修士課程には21名を受入れている。大学院入学試験は,全国の大学の天文学科,物理学科,数学科などの学部卒業者が同じ入試条件で入学できるように配慮されている。大学院修士課程からは5~8割が博士課程へ進学している。

就職

学部卒業時には,数物系の他学科の卒業生と同様の就職状況を期待できる。大学院修士課程修了者の就職先は,電機メーカー,IT関連,金融,新聞社,経営コンサルティング,公務員など多岐にわたっている。博士課程修了後,研究者を目指す場合は,国内外の大学,研究機関におけるポスドク研究員に就くのが最近の通例である。そして多くの成果を上げて,常勤研究者となっていく。博士課程修了後に一般企業に就職するケースも多く,理学的思考を持った広い視野に立てる人材として, 光学機器,電気メーカー,ソフトウエア関連,IT関連,金融など, 社会のさまざまな分野で活躍している。