基礎を極めて物理学の地平を広げる

早野 龍五(物理学専攻 教授)

図1

講義,物理学演習,ならびに実験風景

図2

2010年度物理学科カリキュラム

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物理学は人類が常に抱いてきたであろう根源的な疑問,たとえば,物質の究極構造,宇宙の成り立ち,多様な物質の奥に潜む基本法則などを,実験と理論によって解明してゆく強力な体系で,そのフロンティアは常に拡大しつつある。

私たちが取り組んでいる謎のほとんどは簡単には解けないし,解けたとしても,すぐに人々の役に立つとは限らない。しかし,物理学上の大きな発見は人類の自然観を変え,長い目で見ると多大な波及効果を産んできた。

ところで,物理学のフロンティアに挑むには,まず「道具」を研ぎ澄まさねばならない。そこで物理学科のカリキュラムは,量子力学,電磁気学,統計力学の基礎を徹底的に学ぶことを重視している。また,実験については,根本原理を深く理解することを重視して行っている。これらにより,物理学科を卒業する頃には,諸外国の一流大学の修士学生にも匹敵する基礎学力を身につけることができると期待している。

学年ごとのカリキュラム概要

駒場4学期

駒場4学期は,量子力学,電磁気学,物理数学などの基礎固めが中心となる期間である。これらの講義は演習(3時間×2日)とセットになっていて,自分で問題を解き,発表することで,理解を深めることができる。また,現在,駒場4学期の講義のうち一日は本郷で開講している。

3年生

本郷に進学後の3年生では,基礎科目のより発展的な内容の学習・トレーニングと,物理実験の基本を学ぶことが中心となる。

実験は月水木の午後に行い,夏学期は真空,放射線,X線散乱,電子回路,計算機の基本を,冬学期は液体ヘリウムを用いた低温実験,生物物理実験,加速器を用いた原子核散乱など,より高度なテーマを扱う。また,主要科目に関しては4学期と同様に演習により,より実践的な理解を深める。

4年生

4年生になると,場の理論,素粒子・原子核物理学,宇宙物理学,固体物理学,量子光学など,最先端の研究の学習が始まる。

これと同時に,火水木の午後に行われる特別実験・理論演習では,学生の希望を取り入れて一研究室あたり2~3名が配属され,研究の現場を体験する。夏学期に特別実験を履修した学生は冬学期には理論演習を履修するなど,通年で特別実験と理論演習の両方を履修することを原則としている。

なお,特別実験・理論演習は,他大学・他学科の卒業論文研究に相当する科目であるが,物理学科では論文作成は課していない。

特色あるカリキュラム

物理学ゼミナール

3年冬学期に開講される物理学ゼミナールは,学生の希望を取り入れて3~4名の少人数に組み分けし,先生を囲んで論文輪講や研究施設の見学などを行っている。学生たちが先端的な研究を垣間見ることができる最初のチャンスである。

学部・大学院共通講義

物理学科では,学生の多様な知的要望に応えるため,4年生の専門性の高い科目のいくつかを学部・大学院共通科目として開講している(図で*を付した科目)。たとえば,2010年度の冬学期には,東大とカリフォルニア工科大学とをハイビジョン・テレビ会議で結び英語で行う講義(先端物理数学)が学部・大学院共通講義として行われ,多くの学部学生も履修している。学生の大多数が物理学専攻に進学をする物理学科では,これらの共通講義を4年生のうちに履修することで,修士課程の学習をいわば先取りできるのである。

また,逆に,重点化によって入学定員が増え,講義の受講者の学力や興味のスペクトルがひろがっている大学院においては,共通科目は,これらを学部時代に履修しなかった学生の,先端物理学の基礎固めになっている。物理専攻では,2011年度より学部・ 大学院共通講義を現在よりも増やすことを予定している。

課外活動

五月祭では,学生が主体的に研究をして,その成果を来訪者にわかりやすく伝える展示を行い,2年連続で最優秀賞(展示・講演部門では3年連続の1位)に輝いた。また12月に開かれる「ニュートン祭」は百二十有余年の伝統を引き継いで学生が主催している。

将来の展望

物理学は,自分自身で考える力をつけ,未知の問題に取り組んでいく学問であり,そのため単なる知識ではなく,しっかりとした物理的思考ができるための基礎学力習得が重要である。

この観点から,量子力学,電磁気学,統計力学の基礎と実験の基本を重視するという物理学科のコア・カリキュラムは今後も変わることはないと考えられる。これらを修得した上で,世界で展開されている物理学の先端に触れる機会を与え,学生のモチベーションの向上を目指したい。また,国際的な研究展開に備え,英語に触れる機会も増やしてゆきたい。